
「ニモ」で有名なカクレクマノミ。実はこの名前には生態や見た目に由来した意味があります。
本記事ではカクレクマノミの名前の由来をはじめ、性別の不思議、販売価格、飼育のポイントまでわかりやすく解説します。
映画では語られないリアルなカクレクマノミの魅力を見ていきましょう。
カクレクマノミの名前の由来とは?

カクレクマノミという名前は、その生活習性と模様に由来しています。
「カクレ」は、カクレクマノミがイソギンチャクの触手の間に身を隠して暮らす習性からきています。
イソギンチャクの毒針を避けられる特別な体質を持つため、天敵から身を守るために常にイソギンチャクの中に“隠れて”生活します。
一方「クマノミ」は、体にある白い帯模様が熊の模様のように見えることから名付けられました。
クマノミ類全般がこの特徴的な白帯模様を持ち、その代表種としてカクレクマノミが知られています。
また英名は「Clown anemonefish(クラウンアネモネフィッシュ)」で、ピエロ(クラウン)のような派手な色彩と、宿主のアネモネ(イソギンチャク)から名付けられています。
学名はAmphiprion ocellarisで、Amphiprionは「小さな魚」、ocellarisは「目のような模様」を意味します。
カクレクマノミとイソギンチャクとの共生

ハタゴイソギンチャク
カクレクマノミが好んで隠れるイソギンチャクは、すべてのイソギンチャクではなく、特定の種類に限られています。代表的なのは以下の通りです。
- ハタゴイソギンチャク(Heteractis magnifica)
カクレクマノミが最もよく共生する種類のひとつで、大きく広がった触手が特徴です。
展示や飼育でもよく見られます。 - サンゴイソギンチャク(Entacmaea quadricolor)
触手の先端が丸く膨らんだ「バブルチップ」が特徴。
水槽飼育でも比較的ポピュラーで、ブリード個体も流通しています。 - シライトイソギンチャク(Heteractis crispa)
長い触手を持ち、白っぽい色合いからこの名前が付いています。
自然界でカクレクマノミが共生する例がありますが、飼育下では難易度が高めです。
カクレクマノミはこれらのイソギンチャクと自然下で共生関係を築きますが、水槽での飼育では必ずしもイソギンチャクが必要ではありません。
もしイソギンチャクと一緒に飼う場合は、水質・照明・水流管理など、イソギンチャク側の環境をしっかり整える必要があります。
カクレクマノミの性別と性転換の不思議

カクレクマノミは、成長とともに性別が変化する「性転換」を行う魚です。
生まれたときはすべてオスとして成長し、群れの中で最も大きく強い個体がメスへと性転換します。
群れは通常、1匹のメスとそのパートナーとなるオス、そして複数の若いオスで構成されます。
メスが死亡すると、次に大きなオスがメスへと性転換し、その後順位が繰り上がります。
この性転換はクマノミ類に共通する特徴で、水族館や家庭の水槽でも観察できる場合があります。
メスはオスよりも体がひと回り大きいため、見分けも比較的しやすい魚です。
カクレクマノミの販売価格と流通状況

カクレクマノミは海水魚の中でも入手しやすい部類で、熱帯魚ショップや通販でも安定して販売されています。
主にブリード(人工繁殖)個体が流通しており、価格は1匹あたり1,000円前後からが一般的です。
一方、模様や色合いが珍しい品種改良個体や、ワイルド(野生採集)個体は価格が上がる傾向があり、数千円〜1万円以上する場合もあります。
購入時には、入荷直後の個体は体力が落ちている場合があるため、餌をしっかり食べている元気な個体を選ぶのがポイントです。
カクレクマノミの飼育ポイント
カクレクマノミは海水魚の中でも飼育しやすい部類に入りますが、海水管理が必要な点は押さえておきましょう。
水槽サイズは60cmクラスが目安で、1ペアであればこのサイズで十分です。
海水の比重や水質の安定を保つため、フィルターやプロテインスキマーを適切に運用することが重要です。
餌は人工餌(マリンフード)をよく食べるため、給餌管理は比較的容易です。
複数飼育する場合は、つがい以外の個体がいじめられることがあるため、2匹またはペア単位での飼育が安定します。
なお、イソギンチャクは必須ではありません。
初心者の場合、イソギンチャクの飼育は難易度が高く、水槽環境にリスクを与えることもあるため、まずはカクレクマノミ単独での飼育から始めるのがおすすめです。
品種改良されたカクレクマノミのバリエーション
カクレクマノミは人気の高さから、さまざまな品種改良が行われています。
我が家にカクレクマノミの中でも希少個体のスノーフレークがやって来ました!!
— わたなべ@なべちゃん (@93yuya) January 22, 2017
やっぱりカクレクマノミと違ってまたいい味出してる~☺#カクレクマノミ#スノーフレーク https://t.co/f5LwV6CfuH pic.twitter.com/qI1paSZrdw
ブラックオセラリス
— 斧田観賞魚センター (@onoda_nara) June 13, 2025
カクレクマノミの突然変異で個体👌
ブリーダー個体なので👍
海水魚飼育の経験が浅い方にもオススメ😆#斧田観賞魚センター #海水魚 #ブラックオセラリス pic.twitter.com/iVO6Oc0bQk
代表的なのは白い模様が大きく入った「スノーフレーク」や、黒化した「ブラックオセラリス」などです。
これらの改良種は模様や色の出方が個体ごとに異なり、コレクション性が高いのが特徴です。
価格は通常のカクレクマノミより高く、数千円〜数万円になる場合もあります。
品種改良個体は見た目が大きく変わっていても、基本的な飼育方法は通常のカクレクマノミとほぼ同じです。
初心者でも取り組みやすい品種といえます。
まとめ|名前の背景を知ると観察がもっと楽しい
カクレクマノミという名前は、「イソギンチャクに隠れる習性」と「熊のような白帯模様」という特徴から生まれた和名です。
性転換やつがいの形成といった独特の生態、入手しやすく飼いやすい性質、さらに多様な品種改良など、名前だけでなく中身もとても奥深い魚です。
映画の「ニモ」としてだけでなく、本来の名前と生態を知ることで、観察や飼育がもっと面白くなります。
水族館や自宅でカクレクマノミを見るときは、その背景もあわせて楽しんでみてください。