
ラブラドールレトリバーは、穏やかで賢く、人と深く関わることを何よりも喜ぶ犬です。
盲導犬や警察犬として活躍する姿からも分かる通り、忠実で学習能力が高く、初めて大型犬を飼う人にも人気があります。
しかし、その一方で「思っていたより大きい」「抜け毛が多い」「運動量がすごい」と感じる飼い主も少なくありません。
ラブラドールは性格こそ温厚ですが、飼いやすい犬とは限らず、体格・性格・生活環境のすべてを理解して迎えることが大切です。
この記事では、ラブラドールの大きさや性格の特徴から、抜け毛のケア・快適な飼育環境の整え方・飼う前に知っておきたい注意点までを詳しく解説します。
これからラブラドールを家族に迎える方が、後悔なく幸せに暮らせるよう、実際の飼育目線でまとめました。
ラブラドールの平均的な大きさとは?

ラブラドールレトリバーは大型犬に分類されますが、見た目よりも筋肉質で引き締まった体をしています。
まずは一般的な成犬サイズの目安を見ていきましょう。
成犬(オス・メス)の体高と体重の目安
ラブラドールの平均的な体格は次の通りです。
- オス:体高 57〜62cm/体重 29〜36kg
- メス:体高 55〜60cm/体重 25〜32kg
オスの方がやや大きく、骨格や筋肉の発達も目立ちます。
一方でメスはやや小柄で引き締まった印象になり、顔立ちも優しい傾向があります。
JKC(ジャパンケネルクラブ)の公式基準サイズ
日本国内で犬種の基準を定めているJKC(ジャパンケネルクラブ)では、ラブラドールの理想体高をオス57〜62cm、メス55〜60cmと定めています。
これは世界的な基準であるFCI(国際畜犬連盟)の規格とほぼ同じです。
つまり、体重よりも「バランスのとれた体格」が重視されており、肥満傾向になると基準外となります。
子犬の成長と大きさの変化

ラブラドールの子犬は、成長スピードがとても早い犬種です。
特に生後半年までの期間に急激に大きくなります。
生後3か月・6か月・1年ごとの体重推移
成長の目安は以下の通りです。
| 月齢 | 体重目安(オス・メス共通) | 特徴 |
|---|---|---|
| 生後2か月 | 約5kg前後 | まだふっくらした子犬体型 |
| 生後3か月 | 約8〜10kg | 骨格がしっかりしてくる時期 |
| 生後6か月 | 約20〜25kg | 成犬の半分以上の大きさに |
| 生後12か月 | 約28〜35kg | 体格がほぼ完成する時期 |
個体差はありますが、1歳を過ぎると成犬の体格に近づき、2歳頃までに筋肉がついて理想体型になります。
成長期に注意すべきポイント(肥満・関節など)
ラブラドールは成長期に食欲旺盛で、つい食べすぎてしまう傾向があります。
急激な体重増加は関節や股関節形成不全のリスクを高めるため、「ふっくら可愛い子犬」を通り越して太りすぎないよう注意が必要です。
ラブラドールのオスとメスでどれくらい違う?

同じラブラドールでも、性別によって大きさや見た目の印象に違いがあります。
体格・骨格・筋肉量の違い
オスは胸板が厚く、肩周りや首回りの筋肉がしっかりしており、がっしりした印象です。
一方メスは全体的に細身で、頭部や顔の輪郭もやや小さめ。
体重差は平均で3〜5kgほどあります。
性別による性格・運動量の差も解説
オスは活発でエネルギッシュなタイプが多く、外遊びや運動を好みます。
メスは落ち着きがあり、穏やかな性格の子が多い傾向です。
ただし、しつけや環境によって性格は変化するため、あくまで傾向として捉えましょう。
体格差が生まれる理由とは?

ラブラドールといっても、個体によって体格差があります。
その主な理由を見ていきましょう。
血統(ショータイプ・フィールドタイプ)の違い
ラブラドールには大きく分けて2つの系統があります。
- ショータイプ(イングリッシュタイプ):体格ががっしりしており、骨太で丸みのある体型。ドッグショー向き。
- フィールドタイプ(アメリカンタイプ):体がスリムで足が長く、動きが軽快。作業犬・競技向き。
見た目の印象も異なるため、「うちの子が少し大きい(小さい)」と感じても、血統タイプの違いである場合が多いです。
食事や運動量などの生活習慣による差
同じ血統でも、毎日の食事内容や運動量によって体型は大きく変わります。
高カロリーなフードを多く与えると筋肉よりも脂肪がつきやすく、逆に運動不足だと締まりのない体になります。
特に避妊・去勢後は代謝が落ちやすいため、体重管理がより重要になります。
理想の体型を保つためのコツ

ラブラドールは太りやすい体質のため、日々のケアが大切です。
適正体重を維持する食事管理
成犬期の理想体重を維持するには、体型チェックが基本です。
肋骨に軽く触れて感じられる程度が理想的。
見た目にくびれがあり、上から見て胴が少し締まっている状態を保ちましょう。
毎日の運動と体重チェックの目安
1日あたり最低でも1時間程度の散歩やボール遊びが理想です。
また週に1度は体重を量り、前週と比べて変化を確認する習慣をつけることで、
肥満や体調変化を早めに察知できます。

ラブラドールの性格と特徴

優しさと社交性を兼ね備えた家庭向きの性格
ラブラドールレトリバーは「優しい巨人」と呼ばれるほど、穏やかで協調性のある犬です。
攻撃性が少なく、人にも他の動物にもフレンドリーに接することができます。
家庭犬として人気が高いのは、単に人懐っこいだけではなく、「相手の感情を読む力」が非常に優れているからです。
飼い主が落ち込んでいると静かに寄り添い、嬉しいときは一緒に喜んでくれる――そんな繊細な一面を持っています。
この“空気を読む力”があるため、子どもや高齢者とも安心して暮らせる犬種です。
特に小さな子どもがいる家庭では、ラブラドールの穏やかさが良い方向に働きます。
賢く、学習意欲が高い
ラブラドールは非常に知能が高く、学習スピードが速い犬として知られています。
「褒められる=嬉しい」という感情が強いため、しつけも前向きに受け入れます。
この特性から、盲導犬・介助犬・警察犬・災害救助犬など、人のサポートを行う職業犬として世界中で活躍しています。
指示を理解するだけでなく、状況を判断して自主的に行動できる点が評価されています。
ただし、頭が良すぎるがゆえに、退屈が一番の敵です。
何も刺激がない環境が続くと、ストレスが溜まり、いたずらや問題行動につながることもあります。
毎日の散歩に加えて、「一緒にボール遊びをする」「簡単なトリックを覚えさせる」といった工夫を取り入れると良いでしょう。
飼い主への忠誠心が強い
ラブラドールは家族を自分の“群れ”と考え、その中心に飼い主を置きます。
そのため、しつけが上手くいけば非常に忠実で、命令への反応も早く、信頼関係が深まりやすい犬です。
一方で、飼い主に構ってもらえない時間が長く続くと不安を感じやすくなります。
「一人の時間を好む犬」ではなく、「常に人と関わることで安心する犬種」であると理解しておきましょう。
孤独感が強くなると、分離不安(留守中の無駄吠え・破壊行動など)を起こすことがあります。
性格の個体差
ラブラドールといっても、すべての個体が同じ性格ではありません。
血統や育った環境、接し方によって違いが出ます。
特に子犬期の社会化が不足すると、人見知りが強くなったり、警戒心が強く出ることもあります。
そのため、家に迎えた直後は「安心できる空間」「穏やかな声かけ」「適度なスキンシップ」が大切です。
ラブラドールはもともと温厚な性格なので、愛情を持って接すれば、その性格はどんどん良い方向に伸びていきます。
抜け毛は多い?量や時期、対策方法

意外と抜けるラブラドールの毛事情
短毛でスッキリした見た目から「抜け毛が少なそう」と思われがちなラブラドールですが、実は抜け毛が非常に多い犬種です。
理由は被毛が「ダブルコート(二重構造)」になっているため。
外側は硬く水を弾くオーバーコート、内側は柔らかく保温性の高いアンダーコートで覆われています。
このアンダーコートが、季節の変わり目にごっそり抜け落ちます。
特に春(3〜5月)と秋(9〜11月)は「換毛期」と呼ばれ、毎日ブラッシングしても抜け毛が止まりません。
服や家具に毛がつきやすく、掃除を怠ると部屋中がふわふわ舞うほどです。
抜け毛の時期と原因
ラブラドールの毛が抜ける主なタイミングは以下の3つです。
- 春の換毛期:冬毛が抜けて夏毛に生え変わる
- 秋の換毛期:夏毛が抜けて冬毛に生え変わる
- 年間を通した軽い抜け毛:短毛ゆえに常に少量が抜け落ちる
季節以外にも、ストレス・ホルモンバランス・栄養不足・皮膚トラブルなどが原因になることもあります。
「以前より抜け毛が急に増えた」「毛のツヤがなくなった」などの変化があるときは、皮膚疾患やアレルギーの可能性を疑って早めに獣医に相談しましょう。
抜け毛対策の基本
ラブラドールの抜け毛対策は「ブラッシング+掃除+栄養管理」の三本柱です。
ブラッシングのコツ
・換毛期は毎日、通常期は週2〜3回が目安。
・スリッカーブラシでアンダーコートを取り除いた後、コームで仕上げる。
・抜け毛を放置すると皮膚が蒸れて湿疹の原因になるため、定期的なケアが必須です。
掃除の工夫
ラブラドールの毛は短く硬いため、床やカーペットに刺さりやすいです。
掃除機をかける前にコロコロやゴム手袋で毛を浮かせると、効率的に取れます。
また、空気清浄機やペット用ロボット掃除機を導入すると抜け毛の舞い上がりを防げます。
栄養バランスも大切
毛の健康は体の内側から作られます。
オメガ3脂肪酸(サーモンオイルなど)やビオチンを含むフードは、被毛の艶を保ち、抜け毛を抑える効果があります。
シャンプーの頻度と注意点
シャンプーは月1回程度が理想です。
頻繁に洗いすぎると皮脂が落ちすぎて乾燥を招くため、「ニオイが気になる」「毛がベタつく」といったサインが出たタイミングで行いましょう。
ドライヤーでしっかり乾かし、最後にブラッシングで毛並みを整えると、抜け毛の量をぐっと減らせます。
抜け毛とうまく付き合うコツ
ラブラドールの毛は完全に止めることはできません。
しかし、「抜け毛がある=健康に生え変わっている証拠」でもあります。
ブラッシングを通じてスキンシップを取る時間を楽しみながら、日々のケアをルーティン化するのが一番のコツです。
抜け毛の多さも、ラブラドールと暮らす魅力のひとつとして受け入れていきましょう。
快適に暮らせるケージ・室内環境の整え方

大型犬に必要な「広さ」と「安心感」
ラブラドールは活動的で力も強いため、ケージは広さと安全性の両方を満たすことが大切です。
狭いケージではストレスが溜まり、寝返りや伸びができないことで関節にも負担がかかります。
成犬用の理想サイズは、幅120cm×奥行80cm×高さ90cm以上。
中で立ち上がっても頭が当たらず、横たわっても体全体が収まる広さが必要です。
できれば「ケージ」ではなく「サークル+ベッド」という形で、自由に出入りできるスペースを確保してあげるのがおすすめです。
ケージを置く場所のポイント
ラブラドールは家族と一緒にいることを好むため、ケージはリビングの一角や人の動きが見える場所に設置するのが理想です。
孤立した場所や暗い部屋は不安を感じやすく、分離不安の原因になることもあります。
また、エアコンの風が直接当たらない位置を選びましょう。
通気性が悪いと湿気や臭いがこもりやすくなるため、風通しの良い角を選ぶのがポイントです。
室温・湿度の管理
ラブラドールは寒さには比較的強い一方、暑さに弱い犬種です。
夏は室温25℃前後、湿度50%程度を目安に保つのが理想です。
エアコンや除湿機を併用して、空気がこもらないよう注意します。
冬は床から冷気が上がるため、ベッドやマットを少し高い位置に置くと快適です。
暖房器具を使う場合は、コードを噛まないよう安全カバーを設置してください。
床材選びの注意点
フローリングは滑りやすく、ラブラドールの関節に負担をかけます。
特に成長期やシニア期は、滑って足を痛める事故が多発します。
おすすめは、防水性のあるクッションフロアマットやジョイント式マット。
滑りにくく、掃除もしやすい素材を選ぶと、毛の掃除も簡単になります。
快適な寝床とリラックス環境
ラブラドールは体重が重いため、薄いマットでは体圧が分散されず関節を痛めることがあります。
クッション性の高いベッドや低反発マットを使うことで、関節を保護し、熟睡しやすくなります。
また、寝床の周囲にお気に入りのタオルやおもちゃを置いておくと安心感が生まれます。
留守番の時間が長くなる場合は、知育トイなどで“退屈しない工夫”をしてあげると良いでしょう。
外飼いは避けるべき理由
ラブラドールは「もともと屋外で活動していた犬種」ではありますが、現在の日本の気候では外飼いに向いていません。
高温多湿の夏は熱中症の危険があり、冬の寒さや雨風にも弱いです。
さらに、何よりも人と一緒に過ごすことを喜ぶ犬なので、外でひとりにされると孤独を感じ、精神的なストレスが強くなります。
室内飼いを前提に、快適な環境を整えることがラブラドールとの信頼関係を築く第一歩です。

飼う前に知っておきたい注意点

大型犬を迎える「覚悟」と「準備」
ラブラドールレトリバーは温厚で賢く、家庭犬として理想的な存在ですが、大型犬を飼うということは、それ相応の覚悟と責任が必要です。
まず最も意識したいのは、体の大きさ=生活スペースの広さ。
ケージや寝床、運動スペースを確保できない環境では、ストレスや運動不足によって健康を損なうおそれがあります。
また、体重30kgを超える犬をコントロールできる体力も求められます。
散歩中に引っ張られたときに転倒しない力加減を身につけておくことも重要です。
維持費と時間の負担
ラブラドールの飼育コストは、小型犬の2倍以上かかると考えてください。
主な内訳は次の通りです。
- ドッグフード・おやつ:月6,000〜10,000円
- シャンプー・トリミング:月3,000〜5,000円(自宅なら節約可能)
- 医療費(フィラリア・ワクチン・健康診断など):年間4〜6万円
さらに、毎日1時間以上の散歩や遊びが必要で、飼い主の体力と時間の確保は欠かせません。
忙しい日が続いても、運動をサボると肥満・関節疾患のリスクが高まります。
抜け毛・ニオイ・掃除の現実
短毛犬とはいえ、ラブラドールの抜け毛は多く、掃除は日課になります。
特に換毛期は服や家具に毛が付くので、「犬と暮らす=毛と暮らす」と考えた方がいいかもしれません。
また、皮脂がやや多い犬種のため、独特の“犬の匂い”が出やすいです。
定期的なシャンプーと換気で清潔を保ちましょう。
愛情としつけがすべての鍵
ラブラドールは頭が良く、人の言葉や感情をよく理解します。
ただし、賢さゆえに「飼い主が一貫していない」しつけには敏感に反応します。
そのため、家族全員が同じルールで接することが大切です。
暴力的なしつけは逆効果で、信頼関係を損ないます。
正しく褒めて導く「ポジティブトレーニング」を意識すると、お互いにストレスのない関係を築けます。
まとめ
ラブラドールレトリバーは、オスで体高57〜62cm・体重29〜36kg、メスで体高55〜60cm・体重25〜32kgが標準的です。
血統や生活習慣によって多少の差はありますが、大切なのは数字よりも「健康的で引き締まった体型」を維持すること。
毎日の運動と適切な食事管理で、ラブラドールの魅力である力強く美しい体を長く保ってあげましょう。