
雑種犬やミックス犬と暮らしていると、
「この子って何の犬が混ざっているんだろう?」
「病気の遺伝子は大丈夫かな?」
と気になる場面が多いものです。
ところが、ネットで調べると“犬種鑑定・DNA鑑定・血統鑑定”という言葉が混在していて、何がどう違うのか、どれを受ければいいのか分からなくなりがち。
実はこの3つは、目的も内容もまったく違う“別の検査”。
違いを理解しないまま申し込むと「思っていた結果と違う…」となりやすいのが落とし穴です。
この記事では、
- 犬種を知りたい人
- 健康リスクを知りたい人
- 親子関係を確認したい人
それぞれに最適な鑑定方法を、ゼロから分かりやすく整理します。
初めての人でも「どれを選べばいいか」がはっきり分かる構成にしたので、愛犬のルーツを知る手がかりに役立ててください。
犬のDNA鑑定は3種類ある

犬のDNAを調べると聞くと、すべて同じ検査のように感じますが、実際には目的のまったく違う 3つの鑑定方法 が存在します。
- 犬種鑑定(DNA犬種鑑定)
「どの犬種が混ざっているか」を知るための鑑定 - DNA鑑定(遺伝性疾患検査)
「遺伝病のリスク」や「体質」を調べる健康系の鑑定 - 血統鑑定(DNAプロファイル)
親子関係や遺伝の受け継ぎ方を確認する鑑定
名称が似ているため混同されがちですが、“知りたいこと”が違えば選ぶべき検査も変わるのがポイントです。
この記事では、3つの違いを分かりやすく整理し、「自分はどれを受けるべきなのか」がすぐ判断できるように解説していきます。
犬種鑑定とは?

犬種鑑定(DNA犬種鑑定)は、「この子にはどんな犬種の血が混ざっているのか」を知りたい飼い主さん向けの検査です。
雑種犬・ミックス犬は、外見だけではルーツを判断しにくいことが多く、見た目が柴犬なのに実はビーグルの血が強かった、黒い毛並みなのでラブラドールと思っていたらドーベルマンの要素が出た、といった例も珍しくありません。
犬種鑑定では、採取したDNAを世界中の登録犬種データと照合し、「どの犬種がどれくらいの割合で含まれているのか」を推定します。
結果は%で表示され、ひいおじいちゃん世代までの構成が図式で示されるサービスもあります。
犬種鑑定で分かること
犬種鑑定で得られる情報は、見た目では分からない“遺伝子上の傾向”です。
- 祖先に含まれている犬種の比率
- 強く引き継いでいる犬種
- 行動傾向(狩猟犬・牧羊犬など)の参考
- 体格や気質の予測材料
「この子のルーツを知りたい」「どの犬種の影響が強いのか知りたい」そんな飼い主さんにぴったりの鑑定です。
犬種鑑定の精度と限界
犬種鑑定はあくまで“推定”であり、以下のような限界があります。
- データベースに登録されていない犬種は判定できない
日本犬の地域犬、土着犬などは誤差が出やすい - 遠い世代の犬種ほど誤差が大きくなる
ひいおばあちゃん世代は予測モデルの影響が強い - 見た目とDNA結果が一致しないことがある
遺伝の優勢・劣勢が関係するため
そのため、犬種鑑定は「絶対的な正解を知る」ためではなく、“ルーツの手がかりを得る検査” と考えると満足度が高くなります。
DNA鑑定(遺伝性疾患検査)とは?

DNA鑑定という言葉は広く使われていますが、一般的に「DNA鑑定」と呼ばれるものの多くは、“遺伝性疾患(遺伝病)のリスクを調べる検査” を指します。
犬種を知る犬種鑑定とは目的がまったく異なり、健康状態を遺伝子レベルで理解するための検査 です。
「この子は病気になりやすい体質なのか?」
「将来どんな病気に注意すればいいのか?」
「繁殖しても安全なのか?」
そんな不安を抱える飼い主さんに選ばれています。
DNA鑑定で分かること(遺伝病リスク)
遺伝子の型を調べることで、以下のような“リスク傾向”が分かります。
- 特定の遺伝病を発症しやすい体質かどうか
- 発症の可能性が高い遺伝子を持っているか
- キャリア(保因犬)であるか
- 健康な遺伝子型か(クリア)
犬種は関係なく、雑種犬・ミックス犬・純血種すべての犬が対象になります。
注意点として、これは病気を確定させる検査ではありません。
あくまで「発症のしやすさ」を見るもので、生活習慣や環境も大きく影響します。

繁殖前のスクリーニングとしても利用される
DNA鑑定(遺伝性疾患検査)は、近年ブリーダーにも広く普及している検査です。
・遺伝病のリスクが高い組み合わせを避ける
・より健康な遺伝子を次の世代に残す
こうした目的で、繁殖前に必ず検査を受けさせるケースも増えています。
雑種犬やミックス犬の飼い主さんにとっても、「健康管理のヒント」「生活改善の材料」として価値の高い情報が得られます。
こんな人におすすめ
DNA鑑定(遺伝性疾患検査)は次のような人に向いています。
- 遺伝病のリスクを早めに知っておきたい
- 病気の予防をしっかりしてあげたい
- 将来の医療費リスクを減らしたい
- 繁殖を考えていて安全性を確認したい
日々の生活やケアの優先順位を決める材料になるため、健康意識の高い飼い主さんにとっては特に有用な検査です。
血統鑑定(DNAプロファイル)とは?

血統鑑定(DNAプロファイル)は、「親子関係」や「遺伝の受け継ぎ方」を調べたい人向けの検査 です。
犬種を調べる犬種鑑定とも、病気のリスクを調べる遺伝病検査とも異なり、“血統そのものの証明” に使われます。
「本当にこの犬が親犬なのか確認したい」
「保護犬の親子関係を調べたい」
「血統を証明したい」
といった目的で選ばれることが多い検査です。
血統鑑定で分かること
DNAプロファイルでは、遺伝子の型(遺伝子マーカー)を比較することで、親子関係の一致・不一致を非常に高い精度で判定 できます。
一般的には99%以上の確率で「親子である/親子ではない」が分かるため、人間の親子鑑定とほぼ同じ仕組みで行われます。
また、“どの遺伝子を父犬・母犬から受け継いでいるか” も可視化できるため、犬種構成の予測材料として活用できるケースもあります。
血統書の裏付けとして使われることもある
繁殖者の中には、「血統書の内容をより確実にするための証明」として、このDNAプロファイルを活用するケースもあります。
・血統をハッキリさせたい
・繁殖の透明性を高めたい
・トラブルを避けたい
こうした目的で、犬舎全体で導入しているブリーダーもいます。
こんな人におすすめ
血統鑑定(DNAプロファイル)は、以下のような人に向いています。
- 親犬が本当に合っているか確認したい
- 兄弟・親子関係を明確にしたい
- 保護犬のルーツの一部を知りたい
- 血統の証拠を残しておきたい
“犬種を知る”というより、「つながりを証明したい人」向けの検査 と言えます。
3つの鑑定をどう選ぶ?(比較早見表)

犬のDNA鑑定には「犬種鑑定」「遺伝病DNA検査」「血統鑑定」という3種類がありますが、選び方は「何を知りたいか」だけで決まります。
目的別に最適な検査をまとめると、次の表のようになります。
目的別の比較早見表
| 知りたいこと / 目的 | 最適な鑑定 | 分かる内容 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| どんな犬種が混ざっているか知りたい | 犬種鑑定(DNA犬種鑑定) | 祖先犬種・比率・犬種傾向 | 雑種犬のルーツを知りたい / 体質の参考にしたい |
| 病気のリスクを知りたい | DNA鑑定(遺伝性疾患検査) | 遺伝病リスク・キャリア判定 | 将来の病気が心配 / 予防を強化したい / 繁殖予定 |
| 親子関係を確認したい | 血統鑑定(DNAプロファイル) | 親子判定 / 遺伝子の受け継ぎ | 保護犬の親子関係確認 / 血統の証明 / トラブル回避 |
どう選べばいい?一言でまとめると…
- 犬種を知りたい人 → 犬種鑑定
- 健康リスクを知りたい人 → 遺伝病DNA検査
- 親子関係を証明したい人 → DNAプロファイル
この3つは目的がはっきり分かれているため、「何を知りたいのか」さえ決まっていれば迷う必要はありません。
雑種犬でDNA鑑定をするメリット・デメリット

雑種犬は外見だけではルーツが分かりにくいため、DNA鑑定は「その子をより深く理解する手がかり」として役立ちます。
ただし、検査内容によっては期待した情報が得られないこともあるため、メリットとデメリットを知ったうえで選ぶのが安心です。
メリット
① 祖先犬種の傾向が分かり、性格や体質の理解につながる
犬種は行動傾向(警戒心・遊び好き・狩猟本能など)にも影響するため、犬種鑑定でルーツを知ることで、
性格のクセや行動の背景が読みやすくなる ことがあります。
しつけの方向性や運動量の目安にも役立ちます。
② 遺伝病リスクを早めに知り、予防に活かせる
遺伝性疾患のリスクが分かると、食事・運動・生活環境の見直しがしやすくなり、将来の病気を未然に防ぐヒント が得られます。
③ 保護犬でも“その子の物語”がわかり愛着が深まる
雑種犬は背景が分からない場合が多く、鑑定を通して「どんな犬たちの血を受け継いでいるのか」を知ると、家族としての一体感や愛着がさらに強くなる と感じる飼い主も多いです。
④ 親子関係を明確にできる
DNAプロファイルで血縁関係が分かると、保護犬であっても兄弟・親犬のつながりが把握できるため、譲渡後の健康管理や繁殖のトラブル防止に役立ちます。
デメリット
① 犬種鑑定は“推定”であり、必ずしも見た目と一致しない
ルーツが複雑な雑種犬は、データベースに登録されていない犬種が混ざっている可能性があり、見た目と異なる結果が出る、比率が曖昧になる といったケースがあります。
これは誤判定ではなく、推定モデルの特性によるものです。
② 遺伝病リスク=必ず発症するわけではない
遺伝性疾患検査はあくまで“体質”を示すもので、結果がキャリアやリスク高めであっても、生活環境次第で発症しないことも多い ため、過度に心配しすぎないバランスが必要です。
③ 費用がやや高め
1万円前後〜数万円かかるため、複数の検査をまとめて行うとコストが高くなります。
優先順位を決めて必要なものだけ選ぶのがおすすめです。
まとめ
犬のDNA鑑定といっても、実際には犬種鑑定・遺伝病DNA検査・血統鑑定(DNAプロファイル) の3種類があり、
それぞれで分かる内容は大きく異なります。
- 犬種を知りたいなら → 犬種鑑定
- 健康リスクを知りたいなら → 遺伝病DNA検査
- 親子関係を確認したいなら → DNAプロファイル
雑種犬や保護犬はルーツが不明なことが多く、鑑定を通して背景を知ることで、その子の特徴・体質・行動の理解が深まります。
結果は「絶対的な正解」を示すものではありませんが、日々のケアや予防、家族としての安心感につながる“ヒント” がたくさん得られます。
目的に合った鑑定を選んで、愛犬のルーツや健康に対する理解をさらに深めてみてください。