
犬を家族に迎えると、最初に向き合うしつけがトイレトレーニングです。
場所を覚えてくれない、シートからはみ出してしまう、成功と失敗を繰り返すなど、思うように進まず悩む飼い主さんも多いものです。
実は、犬がトイレを覚えられない原因は「性格」や「覚えの悪さ」だけではありません。
トイレの配置、生活リズム、成功体験の積み重ね方など、犬の習性に合った環境づくり ができているかどうかが大きく影響します。
この記事では、犬がスムーズにトイレを覚えられるようになるための基本のコツ、成功率を上げる環境づくり、そして補助的に使えるトイレ誘導スプレーの効果と選び方まで、初心者でも実践しやすい形で詳しく解説していきます。
犬のトイレトレーニング方法
失敗する理由とは?

犬がトイレを失敗してしまう背景には、いくつか共通する理由があります。
「覚えが悪いから」ではなく、環境や経験が原因で覚えづらくなっていることが多いのです。
犬にとって排泄は本来とても慎重になる行動で、少しの刺激で場所を変えてしまうこともあります。まずは犬の気持ちや状況を知ることで、トレーニングの成功率が一気に上がります。
落ち着かない場所にトイレがある
犬は排泄中、無防備になるため警戒心が高まります。
そのため、以下のような場所では落ち着いて排泄できず、失敗につながりやすくなります。
- 家族が通る動線
- 玄関や窓際のように刺激が多い場所
- エアコンの風が直接当たる位置
- テレビの音が響く場所
こうした「落ち着かないトイレ」は、犬にとって覚えにくい環境です。
安心できる場所に移動するだけで、成功するようになるケースはよくあります。
自分のにおいが残っていない
犬は「におい」でトイレの場所を認識しています。
そのため、以下のような状態で覚えにくくなることがあります。
- シートを頻繁に変えすぎて“自分のにおい”が消える
- 失敗した場所のにおいが残っていて、そちらをトイレと勘違いしている
- 多頭飼いの場合、別の犬のにおいに反応して場所を変えてしまう
においの管理は、トレーニングの土台となる部分です。
シートが小さく、体が自然とはみ出してしまう
特に子犬やオス犬は、排泄の姿勢が安定せず前へ進んでしまったり、お尻の向きを変えたりしがちです。
そのため シートの面積が狭いと、成功しているのに結果だけ“失敗扱い” になることがあります。
体の大きさに合わせて「くるっと回れる余裕」+「進んでもはみ出ない奥行き」があると成功率が大きく上がります。
トイレの位置が頻繁に変わる
犬は固定した場所で習慣化する動物です。
そのため、トイレの位置をよく変えてしまうと混乱してしまい、覚えにくくなることがあります。
人間にとっては「少しずらしただけ」の感覚でも、犬にとっては“トイレが消えた”と同じ意味になることがあります。
成犬の急な失敗はストレス・生活変化・体調の可能性も
今までできていたのに突然失敗が増える場合、しつけではなく以下の要因が関係していることがあります。
- 引っ越し・家具移動・来客などのストレス
- 家族の生活リズムの変化
- 膀胱炎や腎臓系の不調
- 老化による尿意コントロールの変化
特に成犬の「急な変化」は、環境か体調を疑うことが大切です。
トイレトレーニングの基本

犬のトイレトレーニングは、「やり方」よりも “タイミング” と “褒め方” の積み重ね が大切です。
特別な道具がなくても、犬の習性に合った教え方をすれば自然と成功率が上がっていきます。
ここでは、どんな家庭でも今日から実践できる基本のコツをまとめていきます。
成功した瞬間を逃さず褒める
トイレトレーニングで最も大事なのは、成功した瞬間を2〜3秒以内に褒めることです。
犬は「した行動」と「褒められたこと」を短い時間で結びつけて覚えます。
・排泄の“途中”から褒める
・終わったらすぐに声をかける
・軽く撫でる、ごほうび(小粒)を与える
この流れが続くと、犬は「ここで排泄するといいことが起きる」と理解し、早く習得につながります。
失敗しても叱らない
失敗した場所を見つけると、つい叱ってしまいたくなります。
しかし、犬は「排泄そのものを怒られた」と解釈することが多く、次のような悪循環を生みます。
- 飼い主の見ていない場所でこっそり排泄する
- 排泄自体を我慢してしまう
- トイレに行くことを怖がる
叱るのではなく、淡々と片付けることが正解です。
失敗場所はきれいに消臭し、次の成功につながる環境づくりを優先しましょう。
排泄しやすい“3つのタイミング”を逃さない
犬は排泄しやすいタイミングが決まっています。
特に子犬の場合は、このタイミングに誘導するだけで成功しやすくなります。
- 起きた直後
- ごはんを食べた後
- 遊んだ後・興奮した後
これらの時間帯は、静かにトイレへ連れて行き、成功しやすい状況を先に作ってあげましょう。
生活リズムを一定にして“習慣化”させる
犬は毎日の繰り返しで行動を覚えていく動物です。
そのため、生活の流れをある程度固定すると、排泄のタイミングも自然と安定します。
たとえば、
・起床 → トイレ
・ごはん → 少し遊ぶ → トイレ
・散歩後 → トイレ
といったパターンを続けるだけでも、犬が「次はトイレだな」と理解しやすくなります。
成功した日は少し大げさなくらい褒める
一度でもトイレで成功した日は、その日の成功率がぐっと上がります。
理由は、褒められた体験が犬に強く残るからです。
毎回同じ声かけ(「いい子だね」「上手だね」など)を使うと習得がさらに早くなります。
トイレ環境を整える

トイレトレーニングは「場所選び」だけで半分成功すると言われるほど、環境づくりが重要です。
犬が安心して排泄できる場所を整えることで、成功体験が自然に増え、トレーニング全体がスムーズに進みます。
ここでは、犬の習性に合った最適なトイレ環境を作るポイントを解説していきます。
落ち着ける場所にトイレを置く
犬は排泄中に無防備になるため、なるべく静かな環境を求めます。
以下のような「刺激の少ない位置」を選ぶと成功率が上がります。
- 部屋の隅・壁際
- 家族の動線から外れた場所
- 玄関や窓際、テレビ前などを避ける
- 人目につきにくいスペース
犬が落ち着ける位置に置くことで、トイレを「安心できる場所」として覚えやすくなります。
シートのサイズは“広め”が基本
トイレシートは、体の大きさ+動く余裕 が必要です。
特に子犬やオス犬は、排泄しながら前に進んだり方向転換するため、標準サイズでは足りないことがよくあります。
・体格より一回り大きいシート
・縦長に広げるとオス犬に効果的
・必要に応じてシートを2〜3枚連結する
はみ出しによる失敗が減ることで、犬の自信にもつながります。
段差が苦手な犬には“トレーなし”も選択肢
トイレトレーはシートのズレ防止に便利ですが、
段差が気になって上がらない犬もいます。
・子犬
・怖がりな性格
・足先の感触に敏感な犬
こうしたタイプの場合は、床にシートだけ置く方法 が向いています。
広く設置できるため、成功しやすい環境をつくれます。
においの管理で“ここがトイレ”を明確にする
犬はにおいで場所を覚えるため、においの管理がとても大切です。
- 成功したシートはすぐ捨てず、半日だけ置いて“自分のにおい”を残す
- 失敗した場所は徹底的に消臭する(におい残り = 再発の原因)
においの扱い方次第で、覚えるスピードが大きく変わります。
多頭飼いの場合は“専用スペース”をつくる
犬同士でにおいの取り合いが起きると、トイレの場所が分からなくなることがあります。
- トイレを2つ以上用意する
- パーテーションで軽く仕切る
- サークル内に1つは設置して「自分の場所」を確保する
多頭飼いでは、各犬が安心できるスペース作りが成功のカギになります。
うまくいかない時の改善策

トイレトレーニングがなかなか進まない時は、犬の性格や覚えの悪さよりも、環境や導き方の“どこかが噛み合っていない” ことがほとんどです。
叱ったり根気だけで乗り切ろうとすると、かえって遠回りになることもあります。
うまくいかない原因を一つずつ取り除くことで、犬が自然に成功しやすい状況をつくることができます。
「成功しやすい状況」を先に作る
犬が排泄するタイミングはある程度決まっています。
そのタイミングでトイレへ連れていけば、成功体験を積み重ねることができます。
- 起きた直後
- ごはんを食べた後
- 遊んだ後や興奮が落ち着いた時
- 寝る前
このタイミングに合わせてトイレに誘導し、成功した瞬間を褒める流れを繰り返すと一気に習得が進みます。
生活音や視覚刺激を減らす
トイレの場所が落ち着けないと、犬はそこで排泄しようとしません。
・人が頻繁に通る場所
・玄関や窓際で外の音が気になる
・テレビの音が大きい
・明るすぎて落ち着かない
こうした環境では、犬は「ここは嫌だ」と判断しやすいので、トイレの置き場所を変えるだけで改善するケースがあります。
匂い残りは失敗の原因になるので徹底的に消す
失敗が続く犬のほとんどは、
「ここでした記憶」=「におい」
で再び同じ場所に戻ってしまっています。
市販の消臭スプレーやクエン酸水で、においを完全に断つことが大切です。
・足元の壁
・家具の裏
・カーペットの繊維の奥
・フローリングの溝
犬の嗅覚は人間の数万倍のため、人には分からない“残り香”でも十分再発のトリガーになります。
逆に“トイレのにおい”は少し残しておく
失敗した場所のにおいは消すべきですが、成功したシートは数時間だけ置いておくと、犬にとって「ここがトイレ」のサインになります。
・完全に無臭にしない
・シートをすぐ全部交換しない
においを適度に残すことが、犬の学習速度を上げてくれます。
成犬が急に失敗し始めたら“健康・環境変化”を疑う
今までできていた成犬の急な失敗は、しつけではなく次のような要因が隠れている場合があります。
- 膀胱炎
- 腎臓系のトラブル
- 老化によるコントロール低下
- 引っ越し・来客・家具移動などの環境変化
- 家族の生活リズムが変わった
健康が理由の場合、トレーニングで改善することは難しいため、まずは原因を確認することが重要です。
犬が“成功して当たり前”と思える環境を作ることが大切
失敗を叱るよりも、成功しやすい状況を整えることが最短ルートです。
「できない理由」を取り除いてあげるだけで、犬の理解が追いつき、自然と成功回数が増えていきます。
トイレ誘導スプレーは必要?

トイレトレーニングの中心は「褒める」「環境づくり」「成功の積み重ね」です。
一方で、スプレーはそれらを補助するアイテムとして使うと効果を発揮します。
特に「においで場所を覚える」犬の習性に働きかけるため、状況によってはスムーズにトレーニングが進むことがあります。
ここでは、使うべきケースと使わない方が良いケース、選び方のポイントを解説します。
誘導タイプ:排泄しやすい“におい”で場所を示す
誘導タイプは、犬が好む優しい香り(植物系・有機物系)や、犬が排泄した時のにおいに近い成分が含まれています。
スプレーを軽くひと吹きすることで、犬が「ここでするべきだな」と理解しやすくなります。
ただし、効果には個体差があり、
- まったく反応しない犬
- 逆に匂いを嫌がる犬
もいます。
最初は少量から試すことが大切です。
また、誘導スプレーのみでトイレを覚えることはできません。
あくまで、成功させるための“きっかけ”づくりとして使いましょう。
消臭タイプ:失敗場所のにおいを完全に断つ目的で使う
こちらは、トイレ誘導よりも「失敗防止」に効果を発揮するスプレーです。
犬はにおいが残っている場所に再び排泄する習性があるため、消臭スプレーはトレーニング全体の成功率に影響します。
・カーペットや床に染み込んだにおい
・家具のそば
・繰り返し失敗してしまう場所
こういった箇所を徹底的にリセットできるため、環境づくりの一部として重要な役割を持ちます。
スプレーだけで覚えさせるのはNG
使い方を誤ると、スプレーは以下のような失敗につながりやすくなります。
- においが強すぎて犬が近寄らない
- シート以外の場所に反応してしまう
- スプレーの効果が切れると成功率が下がる
- 飼い主が「スプレー=主役」と勘違いしてしまう
スプレーはあくまで“補助”。
トレーニングの主役は、犬が自然と成功できる環境とタイミングの設定です。
結局、スプレーはどんな時に使うべき?
スプレーを使う価値が高いのは、次のようなケースです。
- 子犬が「トイレの場所」を理解できていない初期段階
- 成功と失敗の差が大きく、きっかけ作りが必要な時
- 失敗場所のにおい残りが気になる家庭
- 多頭飼いで“においのリセット”が必要な時
一方で、成功率が安定してきたらスプレーは不要になります。
FAQ|犬のトイレトレーニングに関するよくある質問

トイレトレーニングは、犬の月齢や生活環境によって疑問点が変わってきます。
ここでは、多くの飼い主さんが悩みやすいポイントをQ&A形式でまとめました。
実践の中でつまずきやすい部分を押さえておくと、不安が減り、落ち着いて愛犬と向き合えるようになります。
Q1. トイレを覚えるまでどれくらいかかりますか?
犬によって個体差はありますが、子犬なら1〜3週間程度が目安です。
ただし、環境づくりが整っているほど習得スピードは早くなります。
成犬から始める場合は、
・生活リズムの固定
・失敗場所の消臭
・成功体験の積み上げ
を丁寧に行うことで問題なく覚えられます。
Q2. 夜中はどうすればいい?寝ている間に失敗しませんか?
子犬のうちは、睡眠中に排泄することもあります。
・サークル内にトイレを併設する
・シートを広めに敷く
・夜中は無理に起こさない
このあたりを意識すると、寝ている間の失敗を最小限にできます。
成犬は排泄間隔が長くなるため、夜中のトイレはほとんど必要ありません。
Q3. 外トイレ派の犬でも室内トイレは必要ですか?
結論からいうと、室内トイレはあった方が安心です。
・天候の悪い日
・災害時
・体調が悪い時
・シニア期に入った時
こうした状況は必ず訪れます。
外トイレが習慣の犬でも、室内の場所を一つだけ覚えておくだけで、犬も飼い主も生活が楽になります。
Q4. ほめても反応が薄く、なかなか喜んでくれません…?
犬によっては、はしゃぐタイプではなく、静かに嬉しい気持ちを表現する子もいます。
反応が薄くても、「褒められる=正しい行動」という学習はきちんと進んでいます。
・毎回同じ言葉を使う
・ごほうびを小粒で与える
・大げさにしなくてOK
“犬なりの嬉しさ”を受け止めて続けることが大切です。
Q5. トイレシートを噛んだり遊んでしまう…どうすれば?
子犬は好奇心からシートを噛んで遊ぶことがあります。
次の方法が効果的です。
- トレーつきのシート(噛みにくい)を使う
- 噛んだら静かに別のおもちゃへ誘導する
- 退屈を減らすため、日中の遊びや運動を増やす
叱るよりも「別の楽しいこと」へ気持ちを移す方が、早く落ち着きます。
Q6. 多頭飼いでも同じ場所で覚える?ケンカになりませんか?
多頭飼いの場合、
においの取り合いで混乱することがあるため、トイレは複数用意するのがおすすめです。
犬同士が落ち着けるように、
・少し離して置く
・パーテーションで区切る
・サークルの中に1つ設置する
これだけでトラブルが減り、習得も早くなります。
Q7. 成犬になってからでもトイレは覚えますか?
成犬でも問題なく覚えられます。
むしろ、生活リズムが安定しているため、
「決まったタイミング+褒める」
の繰り返しがしやすいというメリットもあります。
ポイントは以下の通りです。
- 失敗場所を徹底的に消臭する
- 成功したらすぐ褒める
- 起床・ごはん後・散歩後のタイミングを固定する
根気よく続ければ、子犬と同じように習得できます。
【まとめ】トイレトレーニングは“成功体験”の積み重ね
犬のトイレトレーニングは、特別な技や道具よりも、 「成功した瞬間を褒める」 というシンプルな方法が一番効果的です。
叱らず、焦らず、犬が自然に成功できる状況を整えることで、覚えるスピードは驚くほど変わります。
トイレを覚えるまでの道のりは、犬の性格や月齢によって異なりますが、どの犬にも共通しているのは次の3つです。
- 落ち着ける環境であること
- 成功を積み重ねられること
- 飼い主が一貫したルールで教えること
そして、スプレーはあくまで補助的なアイテム。
環境づくりと褒める習慣が軸にあることで、初めて効果を発揮します。
失敗が続く時も、犬は決して「わざと」しているわけではありません。
におい・場所・タイミングなど、どこかのズレを一つずつ整えていけば、必ず犬は正しい場所を覚えてくれます。
日々の小さな成功を大切にしながら、愛犬が安心して排泄できる場所を一緒に作っていきましょう。