
フェネックは大きな耳と小さな体が特徴的な、砂漠地帯に生息するキツネの仲間です。
ペットとして紹介されることもある一方、「フェネックは絶滅危惧種だから飼えないのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。
結論からいうと、フェネックはIUCNレッドリストで絶滅危惧種には分類されていません。
一方で、フェネックギツネはワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載されており、国際取引にはルールがあります。環境省の資料でも、フェネックギツネは附属書II掲載種の例として明記されています。
この「絶滅危惧種ではないけれど、国際取引は規制されている」という違いが、フェネックを分かりにくくしているポイントです。
この記事では、フェネックの現在の保全状況や、なぜ絶滅危惧種だと思われやすいのか、ワシントン条約との関係、日本で迎える際に知っておきたいルールについて解説します。
フェネックは絶滅危惧種ではない【結論】

フェネックについて最初に理解しておきたいのが、「絶滅危惧種」と「ワシントン条約で国際取引が規制されている動物」は必ずしも同じではないという点です。
フェネックは保全や取引管理の対象になっていますが、それだけを理由に「絶滅危惧種」とするのは正確ではありません。
IUCNレッドリストではLC(低危険)
フェネック(Vulpes zerda)は、IUCNレッドリストではLC(Least Concern)に分類されています。
LCは、絶滅危惧種として扱われるカテゴリーではありません。
そのため、「フェネックは現在、絶滅危惧種に指定されている」という説明は適切ではありません。
ただし、LCだから将来にわたって何の心配もないという意味でもありません。
野生動物を取り巻く環境や取引状況は変化するため、現在の評価と将来的な保全の必要性は分けて考える必要があります。
ワシントン条約に掲載=絶滅危惧種ではない
フェネックについて混乱しやすいのがワシントン条約です。
フェネックギツネはワシントン条約の附属書IIに掲載されています。環境省は附属書IIについて、現在必ずしも絶滅のおそれがあるわけではないものの、取引を厳しく規制しなければ絶滅のおそれのある種になり得るものと説明しています。
つまり、「ワシントン条約に載っている=現在すでに絶滅危惧種」ということではありません。
この違いを理解すると、フェネックの保全状況が分かりやすくなります。
フェネックが絶滅危惧種と言われるのはなぜ?

「フェネック 絶滅危惧種」と検索すると、絶滅危惧種だと思ってしまう人もいるでしょう。
実際にはIUCNでLCに分類されているにもかかわらず、なぜ絶滅危惧種というイメージがあるのでしょうか。
ワシントン条約に掲載されているため誤解されやすい
大きな理由の一つが、ワシントン条約と絶滅危惧種の混同です。
ワシントン条約は、野生動植物の国際取引によって種の存続が脅かされないようにするための条約です。
そのため、ワシントン条約に掲載されている動物を、すべて「絶滅危惧種」と考えてしまうことがあります。
しかし、ワシントン条約には附属書I・II・IIIがあり、それぞれ掲載基準や取引規制の内容が異なります。
野生個体の捕獲や取引が懸念されている
フェネックは特徴的な見た目から、ペットとして関心を持たれる野生動物でもあります。
そのため、野生個体の捕獲や国際取引が無制限に行われないよう管理することには重要な意味があります。
ワシントン条約の規制は、「すでに絶滅寸前になってから守る」だけの仕組みではありません。
国際取引によって将来的に種の存続が脅かされることを防ぐ役割もあります。
「絶滅危惧種」と「取引が規制される動物」は別
フェネックについては、次の2点を分けて考えると理解しやすくなります。
「IUCNではLCで、現在は絶滅危惧種に分類されていない」
「ワシントン条約附属書IIに掲載され、国際取引が管理されている」
この2つは矛盾するものではありません。
むしろ、現在の保全状況と国際取引による将来のリスクを、それぞれ異なる仕組みで評価・管理していると考えると分かりやすいでしょう。
フェネックはワシントン条約の何類?

フェネックギツネは、ワシントン条約の附属書IIに掲載されています。環境省の資料にも附属書IIの対象例としてフェネックギツネが記載されています。
フェネックはワシントン条約附属書II
ワシントン条約には、規制内容などに応じて附属書I・II・IIIがあります。
フェネックが該当するのは附属書IIです。
附属書Iのように商業目的の国際取引が原則禁止されている区分とは異なります。
附属書IIとはどのような区分?
附属書IIは、現在必ずしも絶滅のおそれがあるわけではないものの、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種になり得る動植物などが対象です。
商業目的の国際取引そのものが一律に禁止されているわけではありません。
その代わり、国際取引には必要な書類や手続きがあります。
国際取引にはルールがある
日本へワシントン条約の規制対象となる動植物を輸入する場合、輸出国のCITES管理当局が発行するCITES輸出許可書等を取得したうえで、必要な手続きを行います。附属書II・IIIに掲載された生きた動物については、日本側でも事前確認の対象になります。
そのため、以前の記事にあった「一般の個人は海外から直接入手できない」と単純に断定するより、フェネックの輸入にはCITESをはじめとした所定の手続きが必要と理解するほうが正確です。
フェネックの個体数は減っている?絶滅する可能性は?

フェネックが絶滅危惧種ではないからといって、野生個体について何も考える必要がないわけではありません。
フェネックの現在の保全状況
現在のIUCNレッドリスト上の評価はLCです。
そのため、現時点で絶滅危惧種として紹介するのは適切ではありません。
一方で、「LCだから絶対に絶滅しない」と考えるのも適切ではありません。
野生動物の保全状況は、生息環境や人間活動などの影響を受けるためです。
野生のフェネックに考えられる脅威
フェネックについては、野生個体の捕獲や取引など、人間活動による影響を無視することはできません。
ただし、一般的な絶滅原因をそのままフェネックに当てはめるのは避ける必要があります。
以前の記事では「森林伐採」「外来種」「里山の管理放置」などを絶滅原因として紹介していましたが、これらは絶滅危惧種全般についての一般論です。
フェネックの記事では、フェネック自身の生息環境や捕獲・取引に関係する問題に絞って考えるほうが適切です。
将来のために国際取引が管理されている
ワシントン条約附属書IIに掲載されていることには、国際取引が野生個体群へ与える影響を管理する意味があります。
附属書IIでは商業目的の国際取引が可能ですが、輸出国政府が発行する輸出許可書などが必要です。
「絶滅危惧種ではないから自由に取引できる」ということでも、「保護動物だから一切取引できない」ということでもありません。
フェネックは日本で飼える?法律上の扱い
フェネックをペットとして検討している人にとって、「日本で飼うこと自体が違法なの?」という点も気になるところでしょう。
ここでは、国内で飼育することと、販売や海外からの輸入を分けて考えることが重要です。
フェネックをペットとして飼育すること自体は?
ワシントン条約は主として国際取引を規制する仕組みです。
したがって、「ワシントン条約附属書IIに掲載されているから、日本国内でペットとして飼うこと自体が一律禁止」という意味ではありません。
ただし、実際に迎える場合には、その個体がどのような経路で流通したのかを確認することが重要です。
また、野生動物を飼育する以上、一般的な犬や猫とは異なる習性や飼育環境についても十分に調べてから検討しましょう。
販売・繁殖などを事業として行う場合のルール
個人が自分のペットとして飼うことと、動物を販売するなどの事業を行うことは別です。
そのため、「フェネックを飼う人は全員、動物取扱業の登録が必要」と受け取れる説明は避ける必要があります。
販売者から購入する場合には、その事業者が必要な登録等を適切に行っているか確認しておくとよいでしょう。
海外からの輸入には別の手続きが関係する
海外からフェネックを日本へ輸入する場合は、国内ですでに流通している個体を飼育する場合とは事情が異なります。
経済産業省によると、ワシントン条約対象種を輸入する際は、まず輸出国側のCITES輸出許可書等が必要です。さらに、附属書II・IIIに掲載された生きた動物は、日本側の事前確認制度の対象です。
「海外でフェネックを見つけたから、そのまま日本へ連れて帰る」というような単純な手続きではありません。
実際に輸入を検討する場合には、購入や輸送を決める前に関係行政機関へ最新の手続きを確認することが大切です。
フェネックを迎えるときに確認したいこと

フェネックは一般的なペットショップでいつでも出会える動物ではありません。
だからこそ、「見つけたからすぐ購入する」のではなく、販売者や個体について確認してから判断しましょう。
販売者の情報を確認する
まず確認したいのが、誰が販売しているのかという点です。
事業者名や所在地、連絡先などを確認し、必要な登録を行っている事業者なのかを確認しましょう。
インターネットだけで取引を進める場合には、特に慎重な確認が必要です。
個体の入手経路や由来を確認する
フェネックはワシントン条約附属書IIの対象です。
そのため、購入を検討するときには、国内繁殖個体なのか、海外から輸入された個体なのかなど、個体の由来について販売者へ確認しておくとよいでしょう。
疑問点があれば、必要な書類や入手経路について説明してもらいましょう。
価格の安さだけで判断しない
希少な動物を探していると、価格の安さに目が向いてしまうことがあります。
しかし、価格だけで販売者を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
個体の健康状態、由来、飼育方法について十分な説明を受けられるかまで含めて判断することが大切です。
購入後も相談できる販売者を選ぶ
フェネックは犬や猫ほど飼育情報や診療できる動物病院が多い動物ではありません。
迎える前に飼育方法を十分に調べることはもちろん、購入後に分からないことがあった場合に相談できる販売者であるかも確認しておきましょう。
「珍しいから飼ってみたい」という理由だけではなく、長期間にわたって適切な環境を用意できるかを考えてから迎えることが大切です。
フェネックは絶滅危惧種?【まとめ】

フェネックは、IUCNレッドリストではLCに分類されており、現在は絶滅危惧種には分類されていません。
一方、フェネックギツネはワシントン条約附属書IIに掲載されています。附属書IIは、現在必ずしも絶滅のおそれがあるわけではないものの、国際取引を適切に規制する必要がある動植物などを対象としています。
そのため、「フェネックは絶滅危惧種だから取引できない」という理解も、「絶滅危惧種ではないから自由に輸入できる」という理解も正確ではありません。
日本国内で飼育することと、販売などを事業として行うこと、海外から生体を輸入することも、それぞれ分けて考える必要があります。
フェネックを迎えたい場合は、見た目のかわいらしさや価格だけで判断せず、個体の由来や販売者の情報、必要な手続き、飼育環境まで確認したうえで慎重に検討しましょう。