犬のしっぽを切る「断尾」は、昔から一部の犬種で行われてきた習慣です。
しかし、そもそもなぜ断尾が必要とされたのか、現代の家庭犬にも本当に必要なのか疑問に感じる人も多いでしょう。
この記事では、断尾の目的・歴史・メリットとリスクを整理し、犬にとってどんな影響があるのかをわかりやすく解説します。
犬のしっぽ切る＝断尾について
犬に断尾を行う理由
犬のしっぽを見ると短い犬やしっぽがない犬がいます。
犬はもともと短いしっぽではなく断尾をして短くなっています。
理由は歴史的、医学的とさまざまです。
伝統維持
ドーベルマンやコーギーなど一部の犬種は昔から断尾が行われていました。
品評会での見た目重視の結果と言われています。
犬のドッグショーでは犬種標準とし、一部の犬種は断尾することが決められています。
昔から断尾をしてきた犬種は、伝統文化を維持することも理由の一つとなります。
傷つくしっぽを防ぐ
敏感な犬のしっぽは動かすことも多く、傷つく可能性が高いことからしっぽから感染症の病気にかかることが考えられます。
障害物で傷つくしっぽを断尾で防ぐことが、犬のしっぽ切る理由です。
不衛生を防ぐ
毛の長い犬種のしっぽは長いのが特徴です。
外で飼われている犬は汚れから皮膚病につながります。
そこで、汚れてしまう範囲を少なくすることで衛生に保つことができるのも一つの理由となります。
変形をなくす
環境や母犬の状態など、子犬が生まれくる時にはそれぞれ違いがあります。
生まれつき、しっぽが曲がっている子犬がいます。
多少しっぽの曲がりがあっても生活に問題はありません。
ですが、見た目の問題となるのが子犬の価値下落や市場に出せない子犬となってしまうこともあるからです。
このような、子犬の数を減らすことが断尾の理由となります。
断尾の歴史
犬のしっぽ切る多くの目的は人に仕えていた使役犬が関係しています。
断尾には歴史的背景がありました。
また、断尾することが決められていた犬種がいました。
断尾が行われる犬種は狩猟犬、牧羊犬、警備犬と多くが人に仕えていた犬です。
狩猟犬（トイプードル、ミニチュア・シュナウザーなど）は獲物を追うとき長いしっぽは怪我をしやすく、怪我することで化膿してしまう危険性があります。
牧羊犬（コーギーなど）の場合、牛や羊にしっぽを踏まれてしまいます。
警備犬（ドーベルマン）はというと長いしっぽが弱点となりしっぽを捕まれてしまうと考えられていました。
なので、危険から犬を守る目的で断尾します。
仕事をするには短いしっぽの方が安全だからです。
犬の断尾はどのように行われるのか
断尾は必ず獣医師が行う医療行為であり、一般の飼い主が自分で行うことは法律的にも安全面でも絶対に認められていません。
ここでは「手順を真似できる具体的な方法」ではなく、動物医療として一般的に知られている概要 を説明します。
生後数日〜10日ほどの子犬に対して行われることが多く、太い骨が完全に発達する前の時期に処置されます。
本来であれば麻酔を用いるのが理想とされていますが、体が未熟な時期の麻酔リスクを避けるため、国や施設によって対応は異なります。
いずれにしても、処置後は痛みや感染を避けるためのケアが必須で、獣医師による診察と消毒管理が行われます。
断尾の方法には複数の医療的アプローチがありますが、いずれも尾椎（しっぽの骨）や血管を扱う外科手技であるため、専門知識と無菌操作が不可欠です。
処置後も腫れ・出血・痛み・細菌感染などのリスクがあるため、経過観察が重要になります。
このように、断尾は単純な作業ではなく「回復までを含めた医療行為」です。
現在は痛みへの配慮や動物福祉の観点から、断尾を行わないブリーダーや飼い主も増えており、“本当に必要かどうか” を事前に慎重に検討することが求められています。
断尾する犬種
断尾が行われてきた犬種は、歴史的に「使役犬」として働いていた犬が中心です。
現在では家庭犬として暮らすことがほとんどですが、犬種標準（スタンダード）の名残として断尾を維持している犬種もあります。ここでは、代表的な断尾犬種を簡潔にまとめます。
ドーベルマン
警備犬として活躍してきた歴史があり、しっぽを掴まれて動きが止められるのを防ぐために断尾が行われてきました。鋭いシルエットを強調するため、ショーの世界でも短いしっぽが定着しています。
ミニチュア・シュナウザー
もともとはネズミ捕りや農家の作業犬として働いていたため、障害物でしっぽを傷つけない目的で断尾がされてきました。現在でも短いしっぽの印象が強い犬種です。
ウェルシュ・コーギー（ペンブローク）
牧羊犬として牛や羊の足元を素早く走り回るため、しっぽを踏まれる事故を避ける目的で断尾されてきた犬種です。ナチュラルボブ（生まれつき短いしっぽ）の個体もいます。
ジャック・ラッセル・テリア
穴に潜って獲物を追う狩猟犬として活躍していた歴史があり、しっぽを怪我しないよう断尾していました。作業性を高めるための伝統的な処置とされています。
ヨークシャー・テリア
現在は愛玩犬としてのイメージが強いですが、もともとはネズミ捕りの作業犬。長い被毛と細いしっぽが傷つきやすかったことから、断尾が広く行われていました。
ポインター・セッター系（イングリッシュポインターなど）
藪の中で獲物を探す猟犬であり、動きが激しいためしっぽをぶつけて裂傷を起こしやすい犬種。狩猟中の怪我予防として断尾が行われてきました。
現代の断尾をめぐる議論｜海外規制と日本の現状
ヨーロッパでは断尾が“原則禁止”の国が多い
ヨーロッパでは、美容目的の断尾を法律で禁止している国が大半です。
イギリスやドイツ、ノルウェーでは、医療的な必要性以外でしっぽを切ることは違法とされています。
伝統や犬種標準よりも、犬の福祉を優先する考えが広がった結果で、違反すると罰金が科される地域もあります。
日本では禁止されていないが議論が活発化
日本では断尾を禁じる法律はなく、今でも生後数日で麻酔なしの断尾が一般的です。
ただ近年は「子犬も痛みを感じる」という研究結果が浸透し、動物病院やブリーダーの中には断尾を行わない方針へ転換するところも増えています。
家庭犬として暮らす犬がほとんどの現代では、断尾の必要性そのものを見直す声が大きくなっています。
飼い主が考えるべき“美しさ”と“健康”のバランス
犬のしっぽはバランスを取る・感情を伝えるなど、多くの役割を持つ大切な器官です。
断尾することで社会性や犬同士のコミュニケーションに影響が出る可能性も指摘されています。
伝統的な見た目を守りたい気持ちも理解できますが、家庭犬として暮らす場合には、健康や行動面を優先して判断することが求められています。
犬のしっぽ切る理由にはデメリットとリスクがある！
ほとんどの犬種が狩猟や牧羊と仕事をさせるためではなく、家庭で可愛がり飼育されていますが、現在でも犬の断尾の習慣が続いているのは、断尾された姿が伝統であるためという理由です。
このような目的の犬に断尾が必要なのでしょうか。
犬のしっぽ切る理由もありますが、その行為をすることでデメリットはないのでしょうか。
痛みを伴う感染症
痛みを伴い、感染症を起こすこともある。
生後2〜10日の生まれたばかりの子犬に麻酔をかけることは危険なことから、麻酔を使わず断尾します。
知覚が発達されていない子犬は痛みを感じていないことから、このように犬のしっぽ切りは行われています。
ですが最近では、子犬も痛みを感じている事実が明らかになっています。
身体能力の低下
犬のしっぽの役割りの一つに身体のバランスを取る意味があるのが、感覚器官のしっぽです。
断尾をすることで慣れるまでうまく歩けなくなることもあります。
意外としっぽには大事な役割りがあります。
例えば、全力で走り曲がるとき断尾していることで、バランスを崩してしまいます。
コミニュケーションが取りづらくなる
犬の気持ちが表れる部位に、しっぽがあります。
しっぽの振り方も嬉しいとき、警戒しているときの感情が分かります。
飼い主さんや他の犬とのコミニュケーションも、取りづらくなります。
このことを考えると、デメリットは大きいでしょう。
犬がしっぽを切る理由とは？【まとめ】
犬の断尾には歴史的な理由があり、使役犬として危険を避ける目的で行われてきました。
しかし現代の多くは家庭犬であり、しっぽはバランス・感情表現・コミュニケーションに欠かせない大切な器官です。
必要性を理解しつつ、犬にとって幸せな選択を考えるきっかけにしてください。
