
犬が同じ場所をくるくる回る姿を見て「なんで?」「病気じゃない?」と心配になる飼い主さんは多いと思います。
嬉しいときの“くるくる”もあれば、ストレス・不安・認知症・体の不調などが理由になる“くるくる”もあります。
とくに突然回るようになったり、回る回数が増えたりした場合は注意が必要です。
この記事では、犬がくるくる回る理由を分かりやすく解説し、どんな時に病院へ行くべきか、家庭でできる対処法まで丁寧にまとめます。
犬がくるくる回る主な理由

犬が同じ場所をくるくる回る理由は、一つに決まっているわけではありません。
嬉しいときや遊びの延長で回ることもあれば、ストレスや体の不調が隠れていることもあります。
ここでは、よく見られる理由を順番に整理していきます。
気持ちが高ぶっている
まず多いのが「気持ちが高ぶっているとき」です。
飼い主さんが帰ってきた瞬間や散歩前など、ワクワクがピークになると、体をどう動かしたらいいか収まりきらずに回る子がいます。
これはポジティブな“くるくる”で、表情やしっぽの動きも明るく、一瞬で分かります。
眠る前に回る
眠る前にくるっと回る仕草も有名です。
野生時代に草を踏んで寝床を整えていた名残といわれ、安心して横になるための本能的な行動です。
この場合は一〜二回転してそのままコロンと横になるため、分かりやすいパターンです。
ストレスや退屈
一方で、ストレスや退屈が理由になることもあります。刺激が少ない環境が続くと、エネルギーを持て余して同じ動きを繰り返しやすくなります。
散歩時間が短い、遊びが不足している、長いお留守番が続いている…といった状況が当てはまることがあります。
認知症
シニア期では、認知症が理由でくるくる回るケースもあります。
呼んでも止まらなかったり、狭い場所でも同じ方向に回り続けたりするのが特徴です。
少しずつ行動に変化が出てくるため、早めに気づくことが大切です。
耳の奥のトラブル
また、耳の奥のトラブル(前庭疾患や内耳炎)でも体のバランスが取れず、本人の意思と関係なく回ってしまうことがあります。
ふらつきや傾きが同時に見える場合は注意が必要です。
腰や耳に痛みがある
さらに、腰や首に痛みがある時も、違和感をごまかすために同じ動きを取ることがあります。
痛みで姿勢が安定しないと、体を動かしてまぎらわせようとするのです。
病気かどうか判断するポイント

犬のくるくる回る行動が“遊び”なのか“異常”なのかを見分けるには、いくつかのポイントを合わせて見るのが確実です。
ひとつの要素だけでは判断しづらいため、行動全体の流れを観察することが大切です。
回る方向・動き方に偏りがあるか
犬が健康なときは、興奮して回るときでも左右どちらにも動けます。
ところが、体のバランスが崩れている場合は 「片方の方向にだけ回りやすい」 といった特徴が出やすくなります。
- 一方向にしか回らない
- ふらつきながら回る
- 自分で止められない
こうした動きがある場合は、耳の奥(前庭)の問題や神経系の異常が疑われます。
呼んだときの反応がどうか
意識の状態を見ると判断しやすくなります。
- 名前を呼ぶとこちらを見る
- 声かけで動きが止まる
この場合は、意識がしっかりしていて“正常の範囲”の可能性が高いです。
反対に、
- 呼んでも止まらない
- 目が合わない
- ぼんやり歩き続ける
といった様子が見えると、認知症や脳の異常が原因のことがあります。
他の症状が併発していないか
回転だけでなく、同時に出ている症状に注目すると異常が判断しやすくなります。
- 食欲がない
- ふらつき・よろけ
- 嘔吐
- 壁にぶつかる
- 元気がない
これらがセットで見えるなら、早めに受診した方が安全です。
行動の変化がいつからか
同じ“くるくる”でも、出始めたタイミングが重要です。
- 昔から興奮時だけ回る → 正常行動の可能性が高い
- 急に増えた/昨日から見られるようになった → 病気のサインの可能性がある
犬は急な変化に弱いため、普段との違いが最も分かりやすい判断材料になります。
自宅でできる対処法

犬のくるくる回る行動が軽い場合は、普段の生活を少し整えるだけで落ち着くことがあります。
原因はいくつかありますが、多くは「運動」「環境」「年齢」の3つに分類すると分かりやすいです。
運動量の見直しで落ち着くことがある
エネルギーが余っている犬は、暇つぶしとして回ることがあります。
散歩の時間を少し増やしたり、家の中で短い遊びを挟んだりするだけで行動が安定する子もいます。
- 散歩の時間・ルートをいつもより少し変える
- 知育トイやボール遊びなどで気分転換させる
無理に長時間付き合う必要はなく、5〜10分の工夫でも十分効果があります。
ストレスを減らして安心できる環境に整える
犬は環境の変化に敏感です。
引っ越し、来客、留守番の増加などが続くと、不安をまぎらわせるように回ることがあります。
静かで落ち着けるスペースをひとつ作ってあげるだけでも気持ちが安定しやすくなります。
- 寝床やクレートを“安全基地”のように整える
- 留守番の前後に短いスキンシップを取る
普段から安心できる“拠点”があると、ストレス由来の行動は減りやすくなります。
シニア犬は「変化を作らない」ことが最大のケア
高齢犬の場合、認知機能の変化が回転行動につながることがあります。
大切なのは、生活環境をなるべく一定に保つことです。
家具の配置を頻繁に変えず、夜間は薄明かりをつけるなど、“いつも通り”を守ることで混乱を防げます。
軽く声をかけたり、体に触れて安心させるケアも効果的です。
回転が増えた日は「落ち着ける環境に誘導する」
回る行動を無理に止める必要はありません。
興奮が続いているだけの場合もあるため、一度静かな部屋へ移動して落ち着くのを待つだけで十分です。
気になる日が続くなら、短い動画を撮っておくと診察時に役立ちます。
すぐ病院へ行くべきケース

犬がくるくる回る行動の中には、早めに受診した方がいいサインが隠れていることがあります。
普段見せる“興奮の回転”とは動き方が違うため、落ち着いて様子を見れば判断できることが多いです。
片側に偏った回り方をする
健康な犬は左右どちらにも動けますが、体のバランスが崩れていると、決まった方向にしか回れなくなることがあります。
とくに「右回りだけ」「左回りだけ」が続く場合は、耳の奥の前庭機能や神経に問題がある可能性が高いです。
こうした回り方は自然に収まらないことが多いため、早めに診察を受けるのが安全です。
ふらつきや嘔吐が同時に見られる
平衡感覚が乱れると、歩くだけでふらついたり、回る途中に倒れそうになったりします。
嘔吐を伴う場合は、内耳炎や前庭疾患など“緊急性のある状態”の可能性があります。
- まっすぐ歩けない
- 頭を傾けたまま戻らない
こうした症状が出ているときは、すぐ受診すべきタイミングです。
昨日まで無かった行動が突然始まる
今まで普通に過ごしていた犬が、急に強く回り始める場合は注意が必要です。
痛み、耳の炎症、神経の異常など、急性のトラブルが起きると、犬は自分でコントロールできない動きを見せることがあります。
「今日は様子がおかしい」と感じた時点で、動画を撮っておくと、診察の際に非常に役立ちます。
高齢犬で“止まれない回転”が続く
シニア犬の場合は、認知症の進行で回る行動が増えることがあります。
ただ、次のような行動が目立つ場合は、進行が早かったり、他の病気が隠れている可能性もあります。
- 呼んでも止まらない
- 狭い場所でも回り続ける
- 夜中に歩き続ける
この場合は受診のタイミングを逃さず、早めに相談することでケアの選択肢が広がります。
まとめ
犬がくるくる回る行動には、嬉しさや遊びの延長で見られる“正常な動き”もあれば、体調の変化やストレスが隠れている場合もあります。表情や行動の流れを一緒に見ると、原因の見当がつけやすくなります。
興奮時に少し回るだけなら心配いりませんが、回る方向が偏っていたり、ふらつき・嘔吐を伴ったり、急に回転が増えたときは注意が必要です。シニア犬で止まれないように回る場合も、早めの相談が安心につながります。
普段の散歩や遊び方、家の中の環境づくりを少し工夫するだけでも、行動が落ち着くことがあります。気になる日が続くなら短く動画を撮っておき、受診時に見せると判断がスムーズです。
愛犬が安心して過ごせる環境を整えつつ、普段との違いに早めに気づいてあげることが、健康管理の大きな助けになります。