
柴犬は一度信頼した相手に深くなつく一方で、なつくまでに時間がかかる犬種です。
「うちの柴犬がなつかない」「他の人には吠える」などの悩みを持つ飼い主さんも多いでしょう。
この記事では、柴犬がなつかない理由や心理、なつくまでの期間、そして信頼を築くための接し方を詳しく紹介します。
焦らず向き合うことで、柴犬との絆は確実に深まります。

柴犬はなつきにくい?それとも一途なだけ?

柴犬は「ワンマンドッグ」と呼ばれるほど、一度信頼した飼い主に強くなつく犬種です。
その一方で、初対面の人や環境の変化に警戒心を見せることが多く、「なつきにくい犬」と思われがちです。
これは性格の問題ではなく、柴犬の本能によるものです。
縄文時代から人と共に暮らしてきた柴犬は、家族を守る番犬としての気質を今も持ち続けています。
常に周囲を観察し、「信頼できるか」を時間をかけて判断する慎重な性格なのです。
そのため、なつかないように見えても、実際は「まだ相手を見極めている段階」。
柴犬が心を開くまでには、安心できる環境と一定のリズムのある生活が欠かせません。
焦らず見守ることが、柴犬との信頼関係を築く第一歩です。
柴犬がなつかない主な理由

柴犬がなつかないように見えるのは、いくつかの性格的・環境的な要因が関係しています。
単なる「気分屋」ではなく、彼らなりの理由があるのです。
警戒心の強さ
まず第一に、警戒心の強さです。
柴犬は日本犬の中でも特に自立心が強く、知らない人や慣れない環境に対して慎重です。
飼い主の様子を見ながら「この人は安全か」「信頼できるか」を冷静に観察しています。
環境の変化に弱い
次に、環境の変化に弱いことが挙げられます。
引っ越しや家具の配置替えなど、生活のリズムが変わるだけでも不安を感じる子が多く、そのストレスから心を閉ざしてしまう場合もあります。
飼い主の接し方にも原因がある
また、飼い主の接し方にも原因があることがあります。
気まぐれに撫でたり、強い口調で叱ったりすると、柴犬は混乱してしまいます。
一貫した態度で接することが、安心感につながるのです。
体調不良やトラウマが影響
さらに、体調不良やトラウマが影響している場合もあります。
過去に痛い思いをした場所や、特定の人・音に反応して警戒するケースも珍しくありません。
柴犬が飼い主になつくまでの期間

柴犬が飼い主になつくまでの期間は、個体差がありますがおおよそ数週間から半年ほどといわれます。
この差を生むのは、飼い主の接し方や柴犬の性格、過去の経験です。
子犬の場合は比較的早く心を開きやすいものの、成犬で迎えた柴犬は慎重です。
過去に怖い経験をしていると、飼い主が優しくしてもすぐには信頼してくれません。
毎日の生活を通して「この人はいつも同じ」「安心できる」と感じるまでには時間が必要です。
なつくスピードを早めるコツは、一定のリズムで関わること。
毎日同じ時間に散歩へ行き、同じトーンで声をかけ、同じ手順でお世話を続けることで、柴犬は次第に心を許します。
また、信頼が芽生えるきっかけは「おやつをくれる」「優しく声をかけてくれる」などの小さな積み重ねです。
最初からべったり懐こうとせず、距離を保ちながら時間をかけることが、結果的に最短の近道になります。
柴犬がなつかれる人の特徴

柴犬は単に優しい人になつくわけではありません。
信頼できる“リーダー”としての存在を感じた相手に、心を開きます。
最も多いのは「お父さんが一番好き」というケース。
世話は主に母親がしていても、柴犬が強く懐くのは、家族を守る立場にある落ち着いた人です。
これは、柴犬が長い歴史の中で“一家の長”と共に生きてきた名残ともいえます。
厳しくても感情的ではなく、いつも穏やかで筋の通った人。
怒鳴らずに的確に指示を出し、褒めるときはしっかり褒める。
そんな一貫した態度を見せる人を、柴犬は「信頼できるリーダー」と認識します。
反対に、気分で叱ったり、過剰に甘やかしたりする人には距離を置きます。
柴犬は感情の起伏を敏感に感じ取るため、安定した空気を好むのです。
つまり、柴犬になつかれる人の共通点は「一貫性」「穏やかさ」「尊重」。
この3つがあれば、どんな柴犬とも確かな信頼関係を築くことができます。
飼い主以外の人になつくまでの時間とコツ

柴犬が飼い主以外の人になつくには、時間と「慣れ」が必要です。
基本的には、飼い主同士が仲良くなる時間+少しの安心感が加わることで、心を開いてくれます。
柴犬は人を観察する力が高く、飼い主が信頼している相手には自然と警戒を解きます。
飼い主と楽しそうに話している姿を見せることで、「この人は安全」と判断するのです。
そのため、無理に触れようとせず、まずは飼い主との会話から距離を縮めるのが効果的です。
実際、何度も顔を合わせているうちに、柴犬の方から少しずつ近づいてきたり、手の届く距離まで来てくれるようになります。
それは「もう怖くない」「安心できる」と思っているサインです。
また、子犬の場合は人懐っこく見えても、誰にでも飛びつくわけではありません。
好きな人には積極的に寄っていく一方で、苦手な相手には慎重になります。
柴犬は年齢に関係なく、相手をよく見て「信頼できるかどうか」を判断しているのです。
焦らず、穏やかに接し続けること。
柴犬が自ら心を開くタイミングを待つことが、最良の“なつかせ方”といえるでしょう。
柴犬になついてもらうための具体的対策
柴犬は一度信頼を得ると生涯のパートナーになりますが、心を開くまでにはコツがいります。
飼い主として、また他の家の柴犬と接する場合でも、いくつかの共通ポイントがあります。
飼い主として接する場合

子犬のうちにできるだけ多くの人や犬と触れ合わせ、社会性を育てることが大切です。
他の犬との関わりを通して「人間や他犬は怖くない」と学ぶことで、将来的に穏やかな性格に育ちます。
また、しつけは一貫性が鍵。
「良いことは褒める」「悪いことは穏やかに注意する」を徹底し、感情で対応しないようにします。
行動に対して正しく評価されることで、柴犬は安心して指示を受け入れるようになります。
さらに、毎日少しの時間でもコミュニケーションを取りましょう。
散歩や遊びの時間だけでなく、静かに寄り添ったり撫でてあげることも絆を深めるきっかけになります。
成犬を迎えた場合は、まず環境に慣れるまで見守ること。
焦らず、柴犬のペースで信頼を積み重ねることが重要です。
他の家の柴犬と接する場合

初対面で無理に触ろうとするのは逆効果です。
特に成犬は慎重な性格のため、まずは視線や声のトーンを穏やかにして、飼い主と軽く会話を交わすところから始めましょう。
柴犬は「飼い主が安心して話している相手」だと理解すると、自ら距離を縮めてきます。
そのときに初めて、手を差し出して匂いを嗅いでもらう程度の接し方が理想です。
もし近づいてこない場合でも、無理に関わらないこと。
「この人は自分のペースを尊重してくれる」と分かることで、次に会った時に心を開くことがあります。
社会化がもたらす“なつきやすさ”

柴犬が他人や環境に慣れるために欠かせないのが「社会化」です。
社会化とは、子犬のうちに外の世界に触れ、音・人・犬・場所などに慣らすこと。
この経験が十分だと、成犬になっても警戒心が強くなりすぎず、落ち着いた性格に育ちます。
社会化期(生後3か月前後)に家の中だけで過ごしていると、外の刺激に慣れないまま成長してしまいます。
その結果、知らない人や犬を極端に怖がったり、吠えたりするようになります。
ですから、ワクチンが終わったら少しずつ外へ出し、五感で世界を知る経験を積ませてあげましょう。
社会化は子犬だけの話ではありません。
成犬でも、繰り返し穏やかな体験を重ねることで「慣れ」は育ちます。
公園でほかの飼い主と挨拶する、散歩コースを少し変えてみるなど、小さな刺激を日常に取り入れることが大切です。
柴犬にとって「なつく」とは、無理に懐柔されることではなく、環境そのものに安心できること。
社会化を通して世界への信頼が育てば、自然と人への信頼も深まります。

柴犬がなつくのは飼い主だけ?【まとめ】
柴犬がなつかないように見えるのは、信頼を築く途中の段階にすぎません。
もともと警戒心が強く、自立心の高い犬種だからこそ、心を開くまでに時間がかかるのです。
けれど、一度信頼を得た柴犬は生涯その絆を守り抜きます。
焦らず穏やかに接し、毎日同じリズムで生活を共にすることが、最も確実ななつかせ方です。
飼い主以外の人にも少しずつ慣れておくことで、トリマーやペットホテル利用時など、柴犬自身の安心にもつながります。
“なつく”とはイコール“信頼”です。
日々の小さな積み重ねが、やがて強い絆へと変わります。
柴犬がそっと寄り添ってくれたその瞬間こそ、最高の信頼の証といえるでしょう。