
犬が「フガッ…フガッ…」と鼻を鳴らし、首を伸ばしながら苦しそうに息を吸い込む姿を見たことはありませんか?
この動きは「逆くしゃみ」と呼ばれるもので、初めて見ると発作のように見えて驚いてしまいます。
実際には多くの犬にみられる生理現象で、命に関わることはほとんどありません。
しかし、頻度が多い場合や発作が長く続く場合には、何らかの刺激や病気が隠れていることもあるため、原因を知り、落ち着いて対処できるようにしておくことが大切です。
この記事では、犬の逆くしゃみのしくみ・起こりやすい理由・対策・病院へ行くべきケースまで、飼い主が知っておきたい内容を分かりやすくまとめて解説していきます。
犬の逆くしゃみとはどんな状態?

犬の「逆くしゃみ」は、鼻から強く息を吸い込みながら「フガッ、フガッ」と音を出す独特の呼吸発作です。
くしゃみのように息を外へ噴き出すのではなく、吸い込む動作が中心になるため“逆”くしゃみと呼ばれます。
多くの犬で見られる生理現象で、発作は数秒〜数十秒ほどで自然におさまります。
命に関わることはほとんどありませんが、初めて見ると「呼吸が止まりそう」「窒息しそう」と感じるほど激しく見えることがあります。
逆くしゃみが起きている時の典型的な様子としては、
- 前足を踏ん張る、または固まる
- 首を前に伸ばす、または上に向ける
- 鼻を鳴らしながら素早く空気を吸い込む
- 胸やお腹が大きく動く
といった姿がよく見られます。
短時間で治まり、発作直後は何事もなかったように普通に行動できるのが逆くしゃみの大きな特徴です。
犬が逆くしゃみをする主な原因

逆くしゃみは「何かに驚いた」「突然起こった」という印象を受けやすいですが、実際は鼻やのどにちょっとした刺激が入っただけで起きる生理的な反応です。
多くの場合、深刻な病気とは関係しません。
どんな刺激が原因になるのか順番に見ていきましょう。
のど・鼻の粘膜が刺激される(もっとも多い理由)
逆くしゃみのほとんどは、鼻やのどの粘膜に軽い刺激が加わることで起こります。
・ホコリ
・細かい毛
・空気の乾燥
・温度差
こうした些細な刺激でも、敏感な犬は大きく反応してしまうことがあります。
人間が「むずむずして思わず鼻をすすった」程度のことが、犬の場合は逆くしゃみとして表れやすいイメージです。
興奮・運動直後・散歩中の匂い刺激
犬は興奮すると呼吸が速くなり、空気と一緒にホコリを吸い込みやすくなります。
そのため、
・遊んだ直後
・散歩中に地面の匂いを嗅いでいる時
・家に来客があった時
こうしたシーンで逆くしゃみが起こるのはよくあることです。
特に散歩中、地面近くで匂いを強く吸い込む行動は刺激になりやすく、逆くしゃみの頻度が増えるきっかけになります。
季節の変わり目・乾燥・アレルギーの可能性
空気が乾燥すると粘膜が刺激されやすくなり、逆くしゃみを誘発します。
とくに冬場の暖房の効いた室内や、春〜秋の花粉の多い季節は起こりやすい傾向があります。
アレルギーがある犬は鼻が敏感なため、逆くしゃみが出やすくなることがあります。
ただし、逆くしゃみだけではアレルギーかどうかは判断できないため、ほかの症状(鼻水・皮膚かゆみ)があるかどうかも同時に確認しておきたいところです。
小型犬・短頭種で多い理由
逆くしゃみは「体のつくり」が影響して起こりやすい犬種があります。
小型犬(チワワ・ポメラニアン・パピヨン など)
気道が細く、刺激の影響を受けやすい。
短頭種(フレンチブルドッグ・パグ・シーズー など)
鼻腔が狭いため、少しの刺激でも呼吸が乱れやすい。
こういった犬種は逆くしゃみが習慣的に起こることが多く、飼い主が「よくあること」と理解していれば過度に心配する必要はありません。
逆くしゃみが起こったときの対処法

逆くしゃみは多くの場合、数十秒ほどで自然に治まります。
しかし、愛犬が苦しそうに見えるため、飼い主としては何かしてあげたくなりますよね。
落ち着かせるための対処はとてもシンプルで、いずれも自宅でできる方法ばかりです。
喉をやさしくさすって落ち着かせる
逆くしゃみ中は、鼻と喉の間に軽い刺激が残っていることがあります。
そこで、首の下側(喉元)をゆっくり上下にさすってあげると、筋肉がゆるみ、発作が治まりやすくなります。
勢いよく揺らす必要はありません。
あくまで「落ち着いていいよ」と伝えるように、優しいタッチで十分です。
鼻を軽くふさぐ(数秒だけ)
よく使われる方法として、犬の鼻先をほんの一瞬だけ軽く押さえる方法があります。
鼻を軽くふさぐことで、一度息を止めるような形になり、次の呼吸でスッと正常な呼吸に戻ることがあります。
- 力を入れない
- 数秒だけ
- 嫌がる場合は無理にしない
この3点を守れば安全に行えます。
少し落ち着かせる・環境を変える
逆くしゃみは、興奮や急な刺激が引き金になることが多いため、
- 抱っこや声かけで安心させる
- 場所を静かな部屋に移る
- 窓を少し開けて換気する
といった「落ち着ける環境づくり」が効果的です。
室内が乾燥している場合は、加湿器をつけるだけでも症状が軽くなることがあります。
水を少し飲ませるのも有効
発作後に落ち着いているようであれば、少しだけ水を飲ませると、喉や鼻がリセットされるため、その後の連続発作が起こりにくくなります。
ただし、発作中に無理に飲ませるのは逆効果になるため、あくまで「落ち着いた後」にしてください。
逆くしゃみの頻度が多い時に考えたいこと

逆くしゃみ自体は多くの犬に見られる動きですが、もし「毎日のように起こる」「1日に何度も続く」という場合は、環境や生活習慣に何か刺激になるものが潜んでいることがあります。
原因のほとんどはすぐ改善できるもので、難しい対策はほとんど必要ありません。
ハウスダスト・花粉・香りもの(芳香剤)が刺激になっている可能性
逆くしゃみの引き金になりやすいのが、空中を漂う細かい刺激物です。
・ハウスダスト
・花粉
・人用の香水
・アロマディフューザー
・柔軟剤の強い香り
こうした「におい・粉じん」が鼻に入ることで、犬は敏感に反応します。
とくに季節の変わり目は室内の換気が増えるため、花粉や外のホコリが入りやすく、逆くしゃみも増える傾向があります。
必要に応じて、空気清浄機を使ったり、芳香剤の種類を見直したりするだけでも変化が出ることがあります。
散歩ルート・首輪の影響(引っ張り癖がある子は要注意)
散歩中に逆くしゃみが頻繁に起こる場合は、首輪で喉が軽く圧迫されている可能性があります。
特に引っ張り癖がある犬は、吸い込むタイミングと喉への圧力が重なり、逆くしゃみが出やすくなります。
・首輪 → ハーネスへの変更
・リードを短めに持ち、引っ張らせない練習をする
・匂い嗅ぎポイントを減らして刺激を避ける
こうした対応で頻度が大きく改善するケースが少なくありません。
室内の乾燥も大きな原因になる
冬場の暖房や、地域柄の乾燥でも逆くしゃみは起こりやすくなります。
乾燥は粘膜を刺激してしまい、少しのホコリでも反応しやすくなるからです。
加湿器を使って室内の湿度を40〜60%程度に保つと、逆くしゃみが目に見えて減ったという飼い主さんも多くいます。
その他、生活習慣の見直しで改善する場合
・興奮しやすい子 → ゆっくり過ごす時間を作る
・掃除の頻度を少し増やす
・犬の寝床周りにホコリが溜まっていないか見直す
頻度が多いときほど、原因は意外とシンプルな生活習慣の中に隠れていることが多いです。
病院へ行くべき逆くしゃみのサイン

逆くしゃみのほとんどは生理現象で、健康な犬にもよくあるものです。しかし、すべてが「問題なし」とは限りません。
逆くしゃみのように見えて、実は別の病気のサインだったというケースもあります。
ここでは、動物病院を受診した方がよいと判断できるポイントを分かりやすくまとめます。
発作が長く続く・何度も繰り返す
通常、逆くしゃみは数秒〜数十秒で治まります。
しかし、
・1分以上続く
・その直後にまた始まる
・1日に何度も繰り返す
といった場合は、刺激の原因が強すぎるか、気道に何らかの問題がある可能性が考えられます。
咳・鼻水・よだれ・苦しそうな呼吸がある
逆くしゃみと似た動きは、咳や呼吸器の異常でも起こります。
特に以下のような症状が一緒に出ている場合は、逆くしゃみではなく別のトラブルの可能性があります。
・咳が多い
・鼻水が続いている
・苦しそうに息を吸う
・よだれが多い
・ゼーゼー・ヒューヒュー音がする
逆くしゃみ単体ではこれらの症状は起きないため、明らかな判断材料になります。
食欲不振・元気がない・ぐったりしている
逆くしゃみがいくら頻繁でも、治まった後に普段どおり元気であれば問題ないケースがほとんどです。
しかし、
・食欲が落ちている
・普段より動かない
・眠りがちでだるそう
こうした「体調全体の変化」が見られる場合は、逆くしゃみとは関係のない体調不良が起きているサインです。
シニア犬・持病がある犬は早めの相談が安心
高齢犬や、呼吸器・心臓に持病がある犬では、逆くしゃみのように見える症状が、別の病気の初期サインであることもあります。
不安を感じる場合は、「逆くしゃみのような動きがあるので診てほしい」と伝えるだけで十分です。動画を撮って見せると、獣医師が判断しやすくなります。
逆くしゃみを予防するための環境づくり

逆くしゃみは病気ではなく、完全に防ぐことはできません。
ただし、日常のちょっとした工夫で 「頻度を減らす」 ことはできます。
犬の鼻や喉に刺激を与えない環境を意識するだけで、大きな改善につながることがあります。
室内の湿度を整える(乾燥を避けるのが最重要)
乾燥した空気は粘膜を刺激し、逆くしゃみを誘発しやすくなります。
特に冬場の暖房の効いた部屋は湿度が30%以下になることもあり、敏感な犬だと頻繁に逆くしゃみを起こしがちです。
・加湿器を使って湿度40〜60%に保つ
・暖房の風が犬に直接当たらないようにする
・水飲み場を複数設置し、こまめに水を飲める環境にする
こうした工夫だけでも症状が軽くなることがあります。
ハウスダスト・花粉など空気中の刺激を減らす
鼻に入る細かい刺激物は逆くしゃみの一番の引き金です。
・布製品(ベッド・毛布)をこまめに洗う
・掃除機+水拭きでハウスダストを減らす
・空気清浄機を使う
・花粉の時期は窓を開けすぎない
犬の生活スペースを中心に清潔を保つと、逆くしゃみの頻度が大きく落ちることがあります。
首輪が刺激になっているならハーネスへ変更
散歩で興奮しやすい犬や、引っ張り癖のある犬は、首輪の圧迫がきっかけで逆くしゃみが出ることがあります。
その場合は、
- 首輪 → ハーネスへ変更
- リードを短めに持ち、引っ張らせない散歩を意識
- 匂い嗅ぎポイントを減らして刺激を避ける
こうした調整で改善するケースが多いです。
興奮しやすい犬は気持ちを落ち着ける習慣づくりを
逆くしゃみは「急に興奮した時」にも起こりやすいものです。日頃から、
・ゆっくり落ち着いて過ごす時間をつくる
・急に遊びを始めるのではなく、ゆっくりテンションを上げる
・帰宅直後のテンションを上げすぎない
といった「興奮コントロール」が予防につながります。
まとめ
犬の逆くしゃみは、多くの犬にみられる生理的な反応で、命に関わることはほとんどありません。
鼻やのどのちょっとした刺激がきっかけで起こり、発作は短時間で自然におさまるのが特徴です。
とはいえ初めて見ると驚いてしまうため、原因と対処を知っておくことが安心につながります。
逆くしゃみが起きたときは、喉を優しくさすったり、鼻先を軽く押さえて呼吸を整えるなど、落ち着かせる対応を心がけてみてください。
環境の乾燥やハウスダスト、散歩中の刺激など、ちょっとした見直しで頻度が減ることも多くあります。
ただし、発作が長く続く、咳や鼻水を伴う、元気がないといった場合は、逆くしゃみではなく別の病気が隠れている可能性もあります。
不安があるときは動画を撮って動物病院に相談すると安心です。
逆くしゃみ自体は珍しいものではないため、まずは落ち着いて様子を見ながら、愛犬が過ごしやすい環境づくりを整えてあげましょう。