
コケ取り役として人気のオトシンクルスネグロの繁殖は、オトシンクルスよりも容易と言われますが、安定して増やすには水槽環境や飼育管理の工夫が欠かせません。
この記事では産卵条件や稚魚の育て方まで、繁殖成功のためのポイントを詳しく解説します。
オトシンクルスネグロはこんな魚

オトシンクルスネグロは、オトシンネグロとも呼ばれ、プレコやロリカリアなどと同じナマズの仲間です。
オトシンクルスの仲間として扱われていますが、実はオトシンクルスとは違うグループに属しています。
大きさはオトシンクルスと同じ4センチ程度ですが、オトシンクルスよりもややがっしりした印象を受けます。
はっきりしたツートーンカラーのオトシンクルスとは違い、茶褐色の虫食い模様が入り組んだ複雑な美しさをもつ魚です。
名前のネグロは、アマゾン川の有名な支流の一つであるネグロ川に由来しますが、別にネグロ川にしかいないわけではないようです。
完全草食であるオトシンクルスとは違い、若干の雑食傾向があることも特徴です。
オトシンクルスよりもコケ取り能力が高いと言われることもありますが、個人的にはあまり違いは感じられませんでした。
オトシンクルスネグロの繁殖方法

昔ながらのオトシンクルスは、餌の難しさから繁殖どころか長期飼育も難しいとされていますが、ネグロはそれよりやや容易な部類に入るようです。
ただし、熱帯魚全体を見渡して繁殖が容易な魚、というわけではないので、ある程度覚悟して臨みましょう。
ペアを揃える
まずはペアをそろえるところからですが、オスとメスで決定的な違いはありません。
メスのほうがやや大きく、ふっくらとする程度です。
前述の通りオスとメスの判別は不可能ですので4~5匹ほど飼育し、ペアが成立するのを待ちましょう。
ペアになったら他と隔離
ペアになると、オスが特定のメスを追いかけまわすような行動をとるので、そうなったら繁殖用の水槽に移します。
産卵はガラス面や水草の表面など、硬いものの表面にくっつけるようにして行います。
水替えをすると水質の変化がきっかけとなって産卵が促進される、という情報もありますが、私の経験ではある日突然産卵していたことがあります。
状態良く飼育できていてペアが成立しているのなら、特に水替えでショックを与える必要はなさそうです。
産卵確認後、親魚は元の水槽へ戻す
産卵を確認したら、親魚は元の水槽に戻します。
産卵後数日たつとふ化しますが、稚魚はヨークサックが取れるまでは動かないようです。
孵化後数日が経過し、ヨークサックが取れると自力で泳ぎだします。
オトシンクルスネグロの繁殖成功率を高めるための水槽環境

オトシンクルスネグロの繁殖成功率を上げるには、水槽環境の安定が何より重要です。
水温は26〜28℃前後が適温とされ、極端な温度変化は避けましょう。
pHは弱酸性(6.0〜6.5)が理想的で、やや軟水の環境が好まれます。
底床には細かい砂やソイルを敷き、産卵床となる広葉水草(アヌビアス、エキノドルスなど)やガラス面が確保できるようなレイアウトにしておくと安心です。
流木や石も隠れ家や休憩場所として有効で、ペアが落ち着きやすくなります。
さらに、産卵前には軽く水替えを行い、新鮮な水で酸素量を高めることで繁殖行動が活発になることがあります。
オトシンクルスネグロの稚魚の餌は?

孵化直後はヨークサックで栄養を吸収する
オトシンクルスネグロの稚魚も他の多くのナマズ類や熱帯魚と同様に、孵化直後はヨークサック(卵黄嚢)を持っています。
このヨークサックから栄養を吸収しながらしばらく静止して過ごし、自力で泳ぎ出す準備を整えます。
孵化直後〜2~3日ほどヨークサックから栄養を摂取し動かない期間を経て、自力で泳ぎ出し外部からの餌が必要になります。
稚魚は雑食傾向が強い
ここで、オトシンクルスよりもネグロのほうが繁殖が容易といわれる所以なのですが、稚魚は親魚よりも雑食傾向が強いようです。
つまり、オトシンクルスよりも与えられる餌のバリエーションが多い、ということになります。
人によって、ブラインシュリンプの孵化幼生を与えた、キャベツを水中で腐らせてインフゾリアを発生させた、マジックリーフを入れておいたら食べた、など様々な意見が飛び交っています。
おそらくどれも正解で、藻類、動物質、デトリタスを問わず何でも食べているのではないでしょうか。
強いて言えば、泳ぎだしたばかりの稚魚にはブラインシュリンプは大きすぎるかもしれません。
成長に伴い草食傾向が強まる
また、非常に成長が早く、数か月後には小さめの親魚くらいの大きさに育っているようです。
成長するにつれて、だんだんと草食傾向が強くなります。
ちなみに、完全な親魚であっても普通の熱帯魚フードを食べるので、成長してもある程度の動物質の餌が必要だと思われます。
オトシンクルスネグロ稚魚飼育の注意事項

オトシンクルスネグロの繁殖が成功すると、数十匹単位で稚魚が生まれることもあります。
孵化した稚魚を無事に育てるためには、餌以外にもいくつか注意点があります。
水槽の過密化によるトラブル
まず気をつけたいのが水槽の過密化です。
稚魚が全て健康に育つと、育成用の小型水槽ではすぐにスペース不足になります。
早めに大きめの水槽へ移すか、譲渡や販売先を確保しておきましょう。
次に重要なのが水質の維持です。
稚魚は体が小さく、水質悪化に非常に弱いです。
数が多い分、餌や排泄物によるアンモニアや亜硝酸の急上昇が起こりやすいので、スポンジフィルターを活用し、こまめな少量換水で清潔な環境を保ちましょう。
フィルター吸い込み事故
さらにフィルター吸い込み事故にも注意が必要です。
泳ぎ始めの稚魚は泳力が弱く、外部フィルターや外掛けフィルターの吸水口に吸い込まれてしまうことがあります。
吸水口にはスポンジやウールを取り付けて対策してください。
また、稚魚期は強い水流に疲れてしまうことがあります。
エアリフト式スポンジフィルターや弱めの水流で負担を減らし、安定した環境を維持しましょう。
成長スピードの個体差
最後に、成長スピードの個体差にも目を配りましょう。
大きく成長した個体が餌を独占することもあるため、サイズの差が大きくなった場合は分けて育成し、全ての稚魚に餌が行き渡るよう配慮します。
オトシンクルスネグロの繁殖は難しい?【まとめ】
オトシンクルスネグロの繁殖は、決して簡単ではありませんが、適切なペア作りと環境づくりができれば成功の可能性は高まります。
今回紹介した水温・pH・レイアウト、そして稚魚の餌や成長過程を参考に、ぜひ繁殖にチャレンジしてみてください。
安定した環境と日々の観察が成功の鍵となります。