
「うさぎに血液型はあるの?」と思う飼い主さんも多いでしょう。
実は研究レベルでは複数の型が報告されていますが、動物病院で調べることはできません。
輸血が必要なときはクロスマッチテストが頼りになります。
この記事では、血液型の基礎から最新の研究、輸血の現実について解説します。
そもそも血液型とは?

血液型を決める「抗原」と「抗体」
血液型は血液中の赤血球の表面にある「抗原」という物質によって決まります。
この抗原の違いが、人間でいうA型・B型・O型などの区別につながります。
そして、抗原と対応する「抗体」と呼ばれる物質が体内に存在することで、異なる型の血液が混ざると拒絶反応を起こす仕組みになっています。
ABO方式と動物の違い
私たちが日常的に使う「A型・B型・O型・AB型」という分け方は、人間に特有のABO方式です。
ところが、動物によってはこの方式が当てはまらない場合も多く、犬や猫、うさぎはそれぞれ独自の血液型分類が存在します。
そのため、動物では「血液型=ABO方式」とは限らないのです。
血液型の役割と医療での重要性
血液型は、日常生活で困ることはほとんどありませんが、輸血や臓器移植など医療の現場では非常に重要です。
型が合わない血液を輸血すると免疫反応によって赤血球が壊され、命に関わる危険があります。
動物の場合も同じで、輸血時に血液型や適合性を確認することが、安全な治療に直結するのです。
うさぎの血液型

うさぎの血液型の種類
まず最初に、我々人間が占いや子供の頃やった性格診断などで使っている一番わかりやすく馴染みのある身近なA型B型O型AB型…というのはABO方式といいます。
海外ではすでにウサギには「A型、B型、C型、E型、F型、H型」の6つの抗体があるとわかっています。
また、この6つの抗体を基準とした場合日本のウサギたちはH型がほとんどになります。
ですが中には人間と共通するA型やB型のウサギもいるようです。
ウサギの血液型はA型かB型の二種類だ、と色々なところで聞くことがありますがそれはわかりやすく説明するためにこのABO型のみで見たからだと思います。
しかし本来の意味でのウサギの血液型はH方式で、種類は「H1型、H2型、H1H2型、O型」の4種。
この方式でみるとうさぎにはH1H2型が一番多いようです。
このH1H2型は人間でいうA型のような存在だと私は勝手に思っています。
ところがどっこい、残念なことにこの血液型のデータは実験動物によるデータなので動物病院などでは使われていません。
うさぎの血液型を知る方法は?

もしかしたら自分の家のウサギの血液型を知りたい…と思う飼い主さんもいるかもしれません。
しかし結論から言いますと動物病院ではうさぎの血液型を知ることが出来ません!
なぜならネコやイヌのように血液型検査をしてくれる病院が存在しないからです。
もし血液型を知ることができることができる場所があるとするならば堅苦しい研究機関ぐらいでしょう。
上記ではわかっているのになんでわからないんだ、と思う人もいるとは思いますがあれは研究機関の実験動物で集めたデータなのでイヌやネコのように動物病院で検査し、知るということが出来ないのです。
うさぎの血液型と性格は関係ある?
人間の「血液型占い」との違い
日本では血液型と性格を結びつける「血液型占い」が有名ですが、これはあくまで娯楽の一つで、科学的な裏付けはありません。
うさぎの血液型に関しても同様で、「A型のうさぎはおっとり」「B型のうさぎは活発」といった性格診断は存在せず、研究でも確認されていません。
うさぎの性格を左右する要因
うさぎの性格は、血液型ではなく 品種の特徴・遺伝・育った環境・飼育スタイル によって大きく変わります。
例えば、ネザーランドドワーフは活発で好奇心旺盛な傾向があり、ホーランドロップは穏やかで人懐っこいと言われます。
さらに、子うさぎ期の経験や飼い主との接し方も、性格形成に大きな影響を与えます。
性格を理解するためのポイント
うさぎの個性を知るためには、血液型を調べるのではなく、日々の行動観察 が何よりも大切です。
ケージの中での落ち着き方、部屋んぽ時の行動、おやつをあげたときの反応などから、その子の性格が少しずつ見えてきます。
血液型よりも「その子がどう感じ、どう行動しているか」を見守ることが、より良い関係づくりにつながります。
うさぎに輸血が必要になったらときはどうするの?

人間の場合、もしそんな状況になったとき血液型がわかっていたら即座に輸血してもらうことが出来ますよね?
ではもし血液型がわからないウサギがもしそんな大怪我を負い輸血が必要になったらどうするのか見ていきましょう。
まず提供してくれる側の子の血と輸血する側の子の血を少し取り混ぜ合わせ、輸血しても大丈夫か問題が起きないか適合性をみる「クロスマッチテスト」を行います。
そしてクロスマッチテストで何も問題がなければ輸血開始という流れになります。
うさぎに輸血が必要になるケース
外傷や手術による大量出血
うさぎは皮膚が薄く血管も細いため、大きなケガや事故、あるいは避妊・去勢などの外科手術で想定以上に出血してしまうことがあります。
このような場合には、失われた血液を補うために輸血が検討されます。
貧血を伴う病気
寄生虫による慢性的な吸血や、消化管出血、子宮疾患などで貧血を起こした際にも輸血が必要になることがあります。
重度の貧血は心臓や呼吸に負担をかけるため、酸素を運ぶ赤血球を補充する目的で輸血が行われます。
中毒や重度の感染症
抗凝固剤入りの殺鼠剤を誤食してしまい出血が止まらない場合や、重い感染症で赤血球が壊されてしまう場合にも、輸血が命をつなぐ手段となります。
これらは緊急性が高いため、クロスマッチテストを行った上で迅速に輸血が判断されることがあります。
血液型検査ができない現状
犬や猫では事前に血液型を調べることで安全に輸血できますが、うさぎの場合は血液型検査を動物病院で行うことはできません。
研究レベルではH方式などの分類が確認されていますが、臨床現場で標準化されている検査方法は存在しないのです。
クロスマッチテストが命綱
そのため、輸血が必要なときにはクロスマッチテスト(血液適合性試験)が頼りになります。
ドナーとレシピエントの血液を直接混ぜ、凝集や溶血など拒絶反応が起こらないかを確認してから輸血を行います。
これにより、血液型が不明でも安全性を確かめられるのです。
最新研究でわかってきたこと
最近の研究では、うさぎ同士のクロスマッチテストで強い拒絶反応が起きないケースが多いことが報告されています。
これは「血液型が違っても安全」という意味ではありませんが、少なくとも「多くのうさぎの血液は適合しやすい」傾向があると考えられています。
とはいえ、個体差はあるため、輸血時には必ずクロスマッチテストが必須である点は変わりません。
うさぎの血液型研究の現状と臨床への課題
実験動物としての研究データ
うさぎの血液型に関する情報は、ほとんどが研究機関での実験動物から得られたデータです。
例えば、A・B・C・E・F・Hといった抗体の存在や、H方式に基づく4種類の型(H1型・H2型・H1H2型・O型)といった分類も、研究目的で集められた結果にすぎません。
そのため、ペットとして飼育されている個体の血液型が同じ傾向にあるのかどうかは、厳密には不明な部分が多いのです。
臨床で活用されない理由
イヌやネコの場合は血液型検査が普及しており、動物病院で輸血対応に役立てられています。
しかしうさぎの場合、血液型の研究結果がそのまま臨床に導入されていません。
その理由は、うさぎの輸血自体が非常にまれであること、さらに研究に必要な試薬や検査体制が整っていないことが大きな壁となっているためです。
今後の可能性
現在はクロスマッチテストによって適合性を調べて輸血を行っていますが、将来的に検査技術が進歩すれば、うさぎも犬猫のように血液型を事前に把握できる日が来るかもしれません。
特に近年はエキゾチックアニマル医療の需要が高まっているため、うさぎの血液型研究が臨床へと応用される期待も少しずつ高まっています。
ウサギにも血液型がある?【まとめ】
うさぎの血液型は研究でいくつかの種類が報告されていますが、現状では一般の飼い主が知る方法はありません。
輸血が必要な際はクロスマッチテストで対応するのが現実的です。
今後、獣医療の進歩によって血液型が臨床で扱えるようになれば、より安全で迅速な治療が期待できるでしょう。
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