
ふわふわの毛が魅力のポメラニアン。
「バリカンで短くしてもいいの?」と迷う飼い主さんも多いでしょう。
この記事では、毛が生えにくくなる原因や安全な使い方、トリマーのおすすめカット法を解説します。
愛犬の被毛を守りながら、可愛く快適に仕上げるコツが分かります。

ポメラニアンにバリカンは使ってもいい?NGな理由と例外部位

ポメラニアンのカットで最も気になるのが、「バリカンを使っていいのかどうか」です。
結論から言うと、全身に使うのはNGですが、一部の部位であればOKです。
理由と安全に使える範囲を詳しく見ていきましょう。
バリカンがNGな理由

ポメラニアンは「ダブルコート」という二重構造の毛を持つ犬種です。
下層にはやわらかいアンダーコート、上層には保護の役割を果たすオーバーコートがあります。
この毛をバリカンで短く刈ると、毛根にダメージが残り、毛が生えにくくなる「ショックロス」が起きることがあります。
再生してもチリチリした硬い毛や、部分的なハゲのような仕上がりになる場合もあります。
特に皮膚が弱い子やシニア犬では、一度傷んだ毛が元に戻らないこともあります。
そのため、全身のバリカン使用は避けるのが基本です。
バリカンを使っていい部位

ただし、すべてが禁止というわけではありません。
清潔維持や安全確保のために限定的に使う部位もあります。
- 足裏:滑り防止のため、肉球まわりの毛を短く刈る(1〜2mm程度)
- 肛門まわり:排泄物がつきやすいので短く整える(1〜3mm程度)
- お腹の下:通気性を高め、毛玉を防ぐために軽く刈る程度
これらは毛量が少なく、衛生目的のための最小限の処理です。
バリカンを使うときは、低速モードで静音タイプを選び、熱がこもらないように途中で刃を冷ますのも忘れないようにしましょう。
ハサミ中心が基本

ポメラニアンの「ふわふわ感」を守るには、やはりハサミ中心のカットが理想です。
ハサミは毛を部分的にすきながら整えられるため、自然なボリュームを残すことができます。
トリマーさんの多くも、バリカンは部分的な補助としてのみ使っています。
ポメラニアンにバリカンを使うなら何ミリ?

全身に使うのは避けるべきバリカンですが、足裏やお尻まわりなど部分的なケアに使う場合、刃の長さ(ミリ数)がとても大切です。
長さを間違えると、思ったより短くなったり、皮膚を傷つけてしまうこともあります。
一般的なバリカンの刃の種類
市販されているペット用バリカンには、主に2mm/5mm/8mmの刃があります。
使い分けの目安は次の通りです。
| 刃の長さ | 特徴 | 向いている部位 |
|---|---|---|
| 2mm | 一番短く、スッキリ仕上がる | 足裏・肛門まわりなど衛生目的 |
| 5mm | 自然な短さで通気性アップ | お腹下・わき下など毛玉防止 |
| 8mm | ふわっと感を残せる | 背中や側面を軽く整える場合(※基本ハサミ推奨) |
サマーカットなどの刈り込みは注意
夏の暑さ対策として全身を短くしたくなる時期もありますが、ポメラニアンの場合、2mmや5mmで全身を刈るのはNGです。
一見涼しそうに見えても、実際は紫外線やエアコンの風が直接皮膚に当たり、逆に皮膚トラブルの原因になります。
また、ダブルコートが再生されないショックロスを起こすリスクも高まります。
失敗を防ぐポイント
- 短い刃を使うときほど低速で慎重に動かす
- 毛の流れに沿って軽く撫でるように刈る
- 皮膚を軽く張って、刃が引っかからないようにする
- 途中で刃が熱くなったらすぐに冷ます
このように、短く刈るほど丁寧さが求められます。
特に顔まわりや耳の近くなどは神経が多いため、自宅では無理をせずサロンに任せるのが安全です。
ポメラニアンを丸刈りにしてはいけない理由

ふわふわの毛が魅力のポメラニアンですが、「夏に涼しくしてあげたい」「お手入れを楽にしたい」という理由で、
バリカンで丸刈りにするのは絶対におすすめできません。
見た目はスッキリしても、毛質や皮膚に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
ここでは、ポメラニアンを丸刈りにしてはいけない理由を詳しく見ていきましょう。
ダブルコートの毛が再生しなくなる可能性
ポメラニアンは、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の2層構造になっています。
前述した通り、この毛を根元からバリカンで刈ってしまうと、毛根が傷み、毛が生えにくくなる「ショックロス」という状態を引き起こすことがあります。
一度ショックロスが起きると、
- 毛が生えてこない
- チリチリした硬い毛になる
- 部分的に薄くなったまま戻らない
といった状態が長く続くことも。
実際に、元のふんわり被毛が戻るまで2〜3年かかったという例もあります。
皮膚が紫外線や乾燥にさらされる
ポメラニアンの毛には、紫外線や乾燥、寒暖差から皮膚を守る役割があります。
丸刈りにすると、皮膚が直接外気にさらされてしまい、トラブルが起きやすくなります。
- 夏場:紫外線や冷房の風で乾燥・炎症・日焼けのリスク
- 冬場:保温できず、体温低下や風邪の原因に
- 通年:皮膚バリアが弱まり、アトピーや湿疹を発症しやすくなる
つまり「短くすれば快適」というのは逆効果で、実は毛を残したほうが体温調節がしやすいのです。
実際のトラブル例と注意点
筆者の知るトリマーさんの中には、
「ライオンカットにしたら、耳横の毛が二度と生えなくなった」
「バリカンで丸刈りしたら皮膚が赤くただれた」
といったケースも報告されています。
このようなトラブルを防ぐためには、
- 全身を刈らずに部分的に整えるだけに留める
- ハサミで短めに整える方向でトリマーに相談する
- 被毛や皮膚の状態を確認してからトリミングに入る
といった配慮が必要です。
バリカンで丸刈りにしてしまうと、取り返しがつかないこともあるため、慎重に判断しましょう。
安全に短くしたいときの代替方法
どうしても短くしたい場合は、以下のような「安全な代替カット」がおすすめです。
- 柴犬カット:ハサミで短めに整え、自然な短毛風に
- たぬきカット:丸みを残して涼しげに
- サマーカット(ハサミ仕上げ):5〜8mm程度を目安に調整
これらは「ハサミで形を作る」スタイルなので、毛根を傷めず、見た目もかわいく仕上がります。
柴犬カット・たぬきカットにバリカンは使う?
ポメラニアンの人気スタイルといえば「柴犬カット」と「たぬきカット」。
どちらも短めで丸みのあるシルエットがかわいいですが、「このスタイルってバリカンで作るの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
実際のところ、バリカンは“部分的にだけ”使用されます。
サロンでは、全体をハサミで整え、細かい部分の仕上げにバリカンを使うことが多いです。
柴犬カットの場合

柴犬カットは、体全体の毛を短めにして、顔まわりや耳をスッキリ見せるスタイルです。
ただし、全身バリカンで刈るのはNG。
サロンでは以下のように仕上げます。
- 背中・体のライン:ハサミで整える
- 足裏・お尻:バリカン(1〜3mm)で衛生的に
- 首まわり:ハサミで自然な丸みを作る
つまり「バリカンで柴犬のように短く」ではなく、「ハサミで柴犬っぽく仕上げる」のが正しい方法です。
バリカンは清潔維持の補助と考えましょう。
たぬきカットの場合

たぬきカットは、首や胸の毛をふんわり残して、全体を丸くずんぐりした印象に見せるスタイルです。
このスタイルではハサミ主体が鉄則。
首の毛をふわっと残すため、バリカンを使うのは以下のような部分のみです。
- 足裏・肛門まわり
- お腹下の毛を軽く整える程度
ハサミで丸みを作ることで、まんまるの「たぬき感」を引き出します。
バリカンを使いすぎると、せっかくのふんわり感が失われてしまいます。
トリマーの実際の比率は?

サロンによって多少異なりますが、柴犬カット・たぬきカットともにハサミ7割+バリカン3割くらいが一般的です。
ハサミで自然な質感を残しながら、バリカンは「清潔に保つための部分使い」として活躍します。
丸みを出したいならハサミ中心
ポメラニアンの自宅でのカット方法と注意点
ポメラニアンのカットは、基本的にはトリミングサロンでの施術が安心ですが、日常のケアや応急的なカットを自宅で行う飼い主さんも増えています。
ここでは、自宅で安全にお手入れするための基本手順と注意点を紹介します。
用意するもの

まずは最低限、以下の道具をそろえましょう。
- コーム(くし):毛並みを整え、絡まりを取るため
- スキバサミ:自然な毛の長さに整えるため
- ペット用バリカン:足裏やお尻など清潔維持用
- 滑り止めマット:犬が安定して立てるようにする
- ブラシ・タオル:カット後の毛を取り除く
すべての道具はペット用を選び、刃が鋭すぎないもの・音が静かなものを使うのがコツです。
カットの手順

- ブラッシングで毛を整える
もつれや毛玉があるとバリカンの刃が引っかかるため、事前にしっかりとかします。 - 足裏の毛をカット
バリカンを1〜2mmに設定し、刃を皮膚に平行に軽く当てて刈ります。
肉球に当たらないよう、少しずつ慎重に動かすのがポイントです。 - お尻まわりの毛を整える
排泄物が付きやすい肛門まわりを短く整えます。
ここも2〜3mmの刃でOK。無理に深く刈り込まないよう注意。 - 体の形をスキバサミで整える
毛の流れに沿って軽くすきながら整えます。
特に首や胸、背中はふんわりと自然な丸みを残すことを意識します。
注意点

- バリカンは連続使用せず、こまめに休ませる(熱を持ちやすい)
- 顔・耳・尻尾などデリケートな部分は無理に触らない
- カット中に嫌がったら中断して落ち着かせる
- 刈りすぎない勇気を持つ(やりすぎ防止)
また、初めての自宅カットでは、全身を整えようとせず部分カットにとどめるのが成功のコツです。
仕上がりが不安な場合は、途中でサロンに相談して整えてもらうと安心です。
ワンポイントアドバイス
FAQ|ポメラニアンのバリカン使用に関するよくある質問


まとめ|ポメラニアンのカットは“ハサミ中心+バリカン補助”が基本
ポメラニアンは被毛がふわふわで密度の高い「ダブルコート」の犬種です。
この毛を守りながら可愛く整えるには、ハサミ中心のカットがもっとも安全で美しく仕上がります。
バリカンは決して完全NGではありませんが、足裏・肛門まわり・お腹下など清潔を保つ範囲だけに限定するのが鉄則です。
おさらいポイント
- 全身バリカンは毛根を傷め、毛が生えにくくなる「ショックロス」の原因に
- 衛生目的での部分バリカンはOK(足裏・お尻・お腹下など)
- 柴犬カットやたぬきカットでもハサミ中心が基本
- バリカンを使うときは低速・短時間・冷却を意識する
- 初心者の自宅カットは“整えるだけ”を目標にする
トリマーさんとの相談が安心
サロンでは、トリマーさんが被毛の状態や皮膚の健康を見ながら「どの程度バリカンを入れても大丈夫か」を判断してくれます。
無理に全身を短くせず、愛犬に合った長さで涼しく・清潔に・可愛く仕上げることが大切です。
仕上げメッセージ
バリカンは便利な道具ですが、使い方を間違えるとポメラニアン本来の魅力を損なってしまうことも。
「ふわふわ感を守るハサミ」「清潔を保つバリカン」——
このバランスを意識することで、愛犬の被毛を健康的に保ちながら、
かわいく長く寄り添える日々を楽しめます。