
子犬は体がまだ未発達なため、少しの変化で水を飲む量が大きく変わります。
「いつもより水を飲む量が多い」「飲んだ後に軟便や下痢、吐くことが増えた」
そんな時は、ストレスや病気など、早めに気づきたい原因が隠れていることもあります。
この記事では、子犬の水飲み過ぎを見極める基準と、症状から読み取れる危険サイン、そして取るべき対策を詳しくお伝えします。
子犬の水飲み過ぎってどの程度なの?

子犬の水飲み過ぎが心配かどうかは、普段の量との違いを見るのが一番です。
子犬は成犬よりよく遊び、興奮しやすいため、運動後に多めに飲むのは珍しくありません。
公園でも、走り回った後にペットボトル半分を一気に飲む子もいるほどで、これは一時的な喉の渇きによるものです。
ただし問題になるのは、落ち着いている時間帯でも大量に飲む・頻繁に排尿する状態が続くときです。
実際に多飲多尿になった犬は、四六時中水を飲んではトイレに行く行動を繰り返していたそうです。
つまり、運動後の一時的な多飲ではなく、「断続的に飲み続ける」「飲む量と頻度が明らかに普段と違う」と感じたら、水の飲み過ぎを疑ってよいサインになります。
子犬の水飲み過ぎを見極めるための基準

子犬が水を飲む量は日によってばらつきがあり、少し多いくらいでは異常とは言えません。
しかし、明確な“飲み過ぎライン”を知っておくと、日常の観察がとても楽になります。
体重あたりの必要飲水量を知っておく
一般的に犬は「体重1kgあたり50〜60ml前後」を目安に水を飲むと言われています。
もちろん運動量や気温で変動しますが、子犬が明らかにこの量を大幅に超える日が続く場合は、水の飲み過ぎを疑って良いでしょう。
特に、落ち着いている時間帯でも同じペースで飲み続ける場合は、環境要因だけでは説明できないケースが多いです。
飲んだ直後の行動が重要なサイン
水を多く飲んだ後に、軟便・下痢・吐く・頻尿といった症状が“毎回セットで出る”場合は、ストレス・病気・胃腸の負担などが関わっている可能性があります。
単発で起きる下痢は珍しくありませんが、「飲む → すぐ不調」が繰り返される時は注意すべき状態です。
また、飲んだ直後に急に寝転ぶ、お腹を丸める、ソワソワ歩き回るという様子がある場合、胃に急激な負担がかかっているサインのこともあります。
生活環境が原因になるケースも多い
子犬は環境変化にとても敏感です。
室内が暑い・寝床が落ち着かない・音が怖い・ひとりの時間が急に増えたなど、些細なストレスで「水を飲んで気持ちを落ち着かせる」行動をとることがあります。
特に、水飲み過ぎ+軟便の組み合わせはストレス性の胃腸トラブルでよく見られるため、生活リズムや飼い主との距離感にも目を向ける必要があります。
飲水制限は基本NG。まずは観察と記録を
「飲み過ぎている気がするから水皿を下げる」という対応は、子犬の場合は危険です。
脱水のリスクが高く、むしろ飲みたくなる衝動が強まってしまうこともあります。
安全に対処するには次のような事前準備が役立ちます。
・1日の飲水量を大まかに把握する
・飲んだ時間とその後の様子を記録する
・軟便や下痢のタイミング、回数をメモする
これらは動物病院での診断にも役立ち、原因解明につながりやすくなります。
受診すべきタイミングの目安
以下のいずれかに当てはまれば、早期受診が望ましい状態です。
・24時間に何度も大量に飲む
・飲んだ後に毎回下痢・軟便・嘔吐が起こる
・急に多飲多尿が始まった
・元気・食欲が明らかに落ちてきた
・体重が減り始めている
子犬は体力の余裕が少ないため、症状を放置すると脱水や低血糖など二次的な不調につながることがあります。
軟便・下痢・吐く時はストレスの可能性も

子犬の水飲み過ぎで気をつけたいのは、水を飲んだ後の様子です。
多飲多尿、軟便、下痢、吐くという症状が頻繁に起こるようになったら、まずは動物病院で診察を受けることが一番です。
私が公園で会った水飲み過ぎワンコたちの場合をご紹介します。
子犬ではありませんが、参考にしてみてくださいね。
クッシング症候群が原因の場合
この子は3歳の柴犬の男の子でしたが、初めて会った時、私はその子が一瞬何犬だかわかりませんでした。
体はガリガリで、耳の毛は抜けて垂れさがり、顔には赤い斑点がいくつもできて、体の被毛はとても薄くところどころハゲてしまっていました。
そして5分くらいの間隔でオシッコを繰り返していました。
この柴犬は、飼い主さんが海外出張中で、飼い主さんのお父さんがお世話をしていました。
しかしお父さんも事故で車いすを使うことになり、思うようにお世話ができなかったそうです。
そのころから脱毛や多飲多尿が始まり、初めはストレスだと思われていたのですが、飼い主さんが帰国して病院に連れて行ったところ、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)と診断されました。
クッシング症候群はホルモン異常が原因で起こる病気ですが、飼い主さんがいないストレスから免疫力が落ちて脱毛などに進行してしまったのではないかと言われたそうです。
この後病院で治療してもらい、今は少しずつ回復に向かっています。
お母さん不在のストレスで水飲み過ぎと胃炎
今度は7歳のトイプードルの男の子です。
里子として70代のご夫婦に引き取られた子なのですが、あっという間にこのご夫婦になついて穏やかに暮らしていました。
しかし、この家のお母さんが働きに出ることになってから、トイプードルの子はストレスから水をびっくりするほど飲むようになり、やがて軟便が始まりました。
その後すぐに軟便は下痢に変わり、吐くようにもなってしまい、お父さんが何度も病院に連れて行ったそうです。
でもストレス性の水飲み過ぎや下痢、嘔吐は治すのが難しいようですね。
吐き気止めや整腸剤は出してもらえたそうですが、根本的な治療はストレスを取り除くこと、つまりお母さんがそばにいてあげることだと獣医さんに言われたそうです。
それでもお母さんは仕事を辞めるわけにはいかなかったので、結局お父さんがその子のストレス解消に一日何度も散歩に連れ出しているうちに症状はおさまってきました。
薬の副作用で突然多飲多尿に
最後は13歳のトイプードルの男の子です。
この子は膵臓に持病があり、定期的に通院していました。
ある時、少し症状が悪化したため、獣医さんから強い薬を処方されました。
その薬を飲み始めた途端、その子は起きている間は常に水を飲んでオシッコをするという動作を繰り返すようになったそうです。
心配になった飼い主さんが獣医さんに相談したところ、薬を変えてみようということになり、変えたらすぐに多飲多尿の症状はなくなりました。
子犬の場合は薬を飲む機会は多くないと思いますが、副作用で水をたくさん飲むようになることもあるのでご注意くださいね。
実例から学ぶ水飲み過ぎの対策

ご紹介した実例から、子犬の水飲み過ぎの原因として、病気、ストレス、薬の副作用の3つが考えられます。
特にストレスの場合は軟便、下痢、吐くなどの症状も出やすいと言えるでしょう。
ストレスの原因は、大好きな飼い主さんに会えない、または飼い主さんたちにかまわれすぎて休むことができない、室内が暑すぎる、トイレが汚くて排泄できないなど、飼い主さんが気づきにくい些細なことが問題になることもあります。
原因不明の場合はすぐ病院へ連れて行きましょう。
明かにストレスの原因がわかる場合には、その原因を取り除くことが一番の対策になります。
しかし原因がわからない時は病気が原因の場合もあるので、対策に悩んで長引かせるよりも動物病院で診てもらう方が愛犬の回復は早まります。
先ほどの犬たちも全員動物病院に連れて行ったことで解決しているので、まずは獣医さんに相談してみてくださいね。
動物病院では、食欲や元気、体重の増減なども尋ねられると思います。
愛犬の様子を色々な方向から観察しておくようにしてくださいね。
子犬が水飲み過ぎで軟便や下痢・吐くのはストレス?【まとめ】
子犬の水飲み過ぎは、ストレス・病気・薬の副作用など、さまざまな原因で起こります。
とくに軟便・下痢・吐く症状を伴う場合は、早めの観察と判断が大切です。
普段の飲水量や様子を記録しておくと原因に気づきやすく、動物病院での診断にも役立ちます。
子犬は体力が少なく脱水や低血糖に陥りやすいので、「少し変だな」と感じたら早めに対処してあげてくださいね。