
「うさぎにも血液型はあるの?」
「人間みたいにA型・B型・O型・AB型に分かれている?」
「もし輸血が必要になったら、血液型が分からなくても大丈夫?」
と気になる飼い主さんもいるでしょう。
結論からいうと、うさぎでも赤血球の抗原や血液型因子について古くから研究され、複数の分類が報告されています。
ただし、私たち人間のA型・B型・O型・AB型と同じように考えることはできません。
2024年に発表されたウサギの輸血研究でも、現在のウサギには臨床で広く認識・利用されている標準的な血液型がないと説明されています。
つまり、
研究上は血液型に関する分類がある
でも、犬や猫のように一般的な動物病院で「この子は○型」と調べる仕組みが確立されているわけではない
というのが現在の状況です。
この記事では、うさぎの血液型について、人間のABO式との違い、H1・H2という昔から研究されてきた分類、血液型と性格の関係、輸血時のクロスマッチテストまで詳しく解説します。
うさぎにも血液型はある?最初に結論

「うさぎにも血液型があるのか?」という疑問に対しては、研究上は複数の赤血球抗原・血液型因子が確認されていますと答えるのが分かりやすいでしょう。
ただし、「うさぎはA型」「この子はO型」というように、人間と同じ感覚で分類するものではありません。
研究では複数の赤血球抗原が報告されている
うさぎの血液に関する研究はかなり古くから行われています。
1942年の研究では、H1とH2という赤血球抗原の有無によって、
O
H1
H2
H1H2
という4つのグループへ分類できることが紹介されています。
さらに当時すでにH3・H4・H5といった別の抗原も報告されており、うさぎの赤血球抗原が単純な4種類だけではないことも示されています。
人間のA型・B型・O型・AB型とは違う
人間ではABO式血液型が広く使われています。
一方、うさぎで歴史的に研究されてきたH1・H2などは、人間のA・B抗原とは別の研究体系です。
「うさぎにもA型やB型があって、人間と同じ血液型に分類できる」という意味ではありません。
現在の臨床で使う標準的な血液型分類はない
2024年の獣医救急分野の研究では、ウサギについて「広く臨床的に認識されている血液型はない」とされています。
そのため、一般的なペットのうさぎについて、
「この子は何型?」
と健康診断のついでに調べるような運用は、犬や猫ほど確立されていません。
そもそも血液型とは?

血液型について理解するには、「抗原」と「抗体」を知っておくと分かりやすくなります。
血液型を決める抗原と抗体
赤血球の表面には、さまざまな構造があります。
その中には、血液型を区別する目印となる「抗原」があります。
異なる赤血球抗原に対して体内の抗体が反応すると、赤血球同士が固まる「凝集」や、赤血球が壊れる「溶血」などが起こる可能性があります。
そのため血液型や血液の適合性は、特に輸血を行うときに重要になります。
人間のABO式と動物の血液型は別
人間でおなじみなのが、
A型
B型
O型
AB型
というABO式血液型です。
しかし、動物すべてがこのABO式で分類されるわけではありません。
犬や猫にもそれぞれ独自の血液型システムがあり、うさぎについても赤血球抗原の研究が行われてきました。
「血液型」という言葉が同じでも、動物種によって分類方法は異なります。
うさぎはA型・B型・O型・AB型なの?

検索していると、
「うさぎにもA型やB型がある」
という説明を目にすることがあります。
ここは少し注意が必要です。
人間のABO方式をそのまま当てはめない
過去のウサギ研究では、A、B、C、D、E、F、H、Iなどの文字を使った抗血清・血液型因子の研究があります。
1958年の日本の研究でも、A、(B)、C、D、E、F、H、Iの抗血清を使ってウサギの赤血球抗原を調べています。
ただし、これらの「A」「B」という文字は、人間のABO式でいうA型・B型と同じ意味ではありません。
「AやBという記号」と「人間のA型・B型」は別
昔の研究では研究者ごとにさまざまな記号が使われてきました。
1960年のNature誌でも、ウサギの血液型について多数の命名法が存在し、それらを比較整理しようとする研究が行われていたことが分かります。
そのため、
「研究論文にAやBという記号がある」=
「人間と同じA型・B型のうさぎがいる」
ではありません。
ここは分けて考えましょう。
研究上の抗原と一般的な血液型は分けて考える
うさぎの血液型について調べると情報が混乱しやすい理由のひとつが、古い免疫学研究で使われた抗原名を、現在の一般的な血液型分類のように紹介しているケースがあることです。
2024年時点の獣医学研究では、現在もウサギには広く臨床認識されている血液型がないとされています。
H1型・H2型・H1H2型・O型とは?
うさぎの血液型を検索すると、
「H1型」
「H2型」
「H1H2型」
「O型」
という4種類を目にすることがあります。
これはまったく根拠のない情報ではありません。
ただし、現在のペット医療で一般的に使われている4種類の血液型という意味ではないことが重要です。
H1・H2を使った歴史的な分類
古い免疫学研究では、ウサギの赤血球にH1とH2という抗原が確認されました。
その有無によって、
H1もH2もない → O
H1のみ → H1
H2のみ → H2
両方ある → H1H2
という4つのグループへ分けることができると報告されています。
4分類だけですべてを説明できるわけではない
同じ1942年の研究でも、H3、H4、H5といった追加の赤血球抗原がすでに報告されています。
さらにその後もウサギの血液型研究では複数の分類法や抗原が研究されてきました。
そのため、
「ウサギの正式な血液型はH1・H2・H1H2・Oの4種類」
と現在の臨床分類として断定するのは適切ではありません。
現在の動物病院で使う標準分類ではない
H1・H2は、うさぎの赤血球抗原を理解するうえでは興味深い研究ですが、犬や猫の血液型のように、現在の動物病院で広く血液型判定に使われているものではありません。
「研究上の分類」と「現在の臨床で使われる血液型」は分けて考えましょう。
ペットのうさぎの血液型を調べることはできる?

ここまで読むと、
「じゃあ、うちのうさぎは何型なの?」
と知りたくなりますよね。
犬猫のような一般的な血液型検査はない
現時点では、ウサギには広く臨床認識された血液型がなく、犬や猫のように一般的な血液型判定を日常診療で行う体制は確立していません。
そのため、通常の飼育で、「健康なうちに血液型だけ調べておこう」と考える必要は基本的にありません。
研究で血液型因子が分かっているのになぜ調べられない?
これは、
研究で赤血球抗原が存在することと、
動物病院で実用的な血液型検査として使えること
が別だからです。
臨床で使うためには、
検査方法
試薬
判定基準
輸血時の臨床的な意味
などが整理されている必要があります。
ウサギでは、歴史的な赤血球抗原研究がそのまま現在の血液型検査として普及しているわけではありません。
輸血が必要になったらどうする?
血液型が分からなくても、血液の「相性」を確認する方法があります。
それがクロスマッチテスト(交差適合試験)です。
うさぎの血液型と性格は関係ある?
Search Consoleでも「うさぎ 血液型 性格」という検索があります。
「A型なら几帳面」
「B型ならマイペース」
といった人間の血液型占いのような性格診断を、うさぎにも当てはめられないか気になる人もいるでしょう。
血液型と性格を結びつける根拠は確認されていない
うさぎについて、赤血球抗原や血液型分類によって性格が決まるという確立した科学的根拠はありません。
そのため、
「このうさぎは○型だからおとなしい」
といった性格判断はできません。
性格を見るなら日々の行動を観察する
うさぎにはそれぞれ個性があります。
人との接し方、生活環境、これまでの経験、体調などでも行動は変わります。
ケージの中での過ごし方や、部屋んぽ中の反応、飼い主への近づき方などを日々観察する方が、その子の性格を理解するうえでは役立つでしょう。
血液型よりも、その子自身の行動を見ることが大切です。
うさぎに輸血が必要になるのはどんなとき?

うさぎでも重度の貧血や出血が起これば、獣医師が輸血を検討する場合があります。
2024年の輸血研究では、ウサギで重度の貧血につながり得る原因として、外傷、肝葉捻転、コクシジウム症などが挙げられています。
また、2026年に報告された21例のウサギへの全血輸血では、主な輸血理由として肝葉捻転による出血や手術中の出血が報告されています。
大量出血
事故や病気、手術などによって大量に血液を失った場合、酸素を運ぶ赤血球が不足します。
状態によっては輸血が検討されます。
重度の貧血
出血だけでなく、病気によって重度の貧血を起こした場合にも輸血が必要になることがあります。
ただし、輸血を行うかどうかは貧血の数値だけでは決まりません。
原因や症状、全身状態などを含めて獣医師が判断します。
血液型が分からないのにどうやって輸血するの?
人間なら、
「A型だからA型の血液」
というように血液型を確認して輸血するイメージがあります。
うさぎでは、血液型が一般的に臨床利用されていないため、ドナーと輸血を受けるうさぎの血液の適合性を確認する検査が重要になります。
クロスマッチテストとは?
クロスマッチテストは、輸血する血液と患者側の血液に不適合がないかを確認する検査です。
2024年の研究では、クロスマッチによって赤血球の凝集や溶血が起こるかを確認しています。
簡単にいえば、
「このドナーの血液を、このうさぎへ輸血したときに免疫学的な問題が起こりそうか」
を輸血前に調べるための検査です。
凝集や溶血を確認する
相性が悪い場合、赤血球が集まって固まる「凝集」などが確認される場合があります。
2024年の研究では、11羽のニュージーランドホワイト同士の主要クロスマッチでは、調べた組み合わせで溶血・凝集は確認されませんでした。
ただし、これは11羽という限られた数・特定の品種で行われた研究です。
すべてのペットウサギにそのまま当てはめることはできません。
クロスマッチテストの「やり方」は?
Search Consoleでは「クロスマッチ やり方」という検索からも表示されています。
ただし、クロスマッチは飼い主が自宅で行う検査ではありません。
動物病院で血液を使って適合性を調べる
研究で使われる主要クロスマッチでは、輸血を受ける側の血漿とドナー赤血球を組み合わせ、凝集や溶血の有無を確認します。2024年の研究では、洗浄した赤血球を用いた標準的なチューブ法で評価しています。
ただし、実際の臨床でどの方法を選択するかは病院によって異なります。
家庭で血液を採って試すような検査ではありません。
クロスマッチで適合してもリスクがゼロになるわけではない
クロスマッチは重要な安全確認ですが、
「クロスマッチ陰性=絶対に副作用が起こらない」
という意味ではありません。
輸血では免疫反応以外にも、循環への負担などさまざまな問題が起こる可能性があります。
初めての輸血でもクロスマッチは必要?
ここは少し慎重に考える必要があります。
初回輸血で高い適合性を示した研究はある
2024年の研究では、過去に輸血歴のない11羽のニュージーランドホワイトについて、ウサギ同士の主要クロスマッチで溶血や凝集が確認されませんでした。
eClinpathもこの研究について、初回のウサギ同士の輸血ではクロスマッチを省略できる可能性を研究者が示したと紹介しています。
「初回なら誰の血でも大丈夫」とは言えない
しかし、この研究は11羽のニュージーランドホワイトだけを対象にしています。
eClinpathも、他の品種を調べておらず、より多くのウサギへ結果をそのまま適用できるとは限らないと注意しています。
そのため、
「初めての輸血だからクロスマッチは絶対不要」
と一般の飼い主が判断するべきではありません。
実際に検査をするか、どのドナーを選ぶかは、緊急性や病院の方針を含めて獣医師が判断します。
うさぎの輸血には副作用やリスクもある
輸血は命を助ける治療になる一方で、リスクがまったくない治療ではありません。
実際のウサギ輸血でも有害反応が報告されている
2026年に報告された21例の家庭ウサギへの同種全血輸血では、クロスマッチを行った13例はすべて陰性でした。
それでも21例中10例で合計14件の有害反応が記録され、呼吸困難や輸血関連の循環過負荷がそれぞれ5例で報告されました。研究では、全体として初回の同種全血輸血は臨床的な効果があり、概ね忍容されたとしていますが、輸血中・輸血後の観察が重要であることが分かります。
クロスマッチだけですべての副作用を防げるわけではない
クロスマッチは主に血液の免疫学的な適合性を見る検査です。
しかし輸血時には、
呼吸状態
循環状態
体温
心拍
全身状態
なども含めて観察する必要があります。
クロスマッチが問題なかったから完全に安全、という意味ではありません。
うさぎの血液型研究と現在の動物医療
「昔から血液型が研究されているなら、どうして今でも血液型を調べないの?」
と疑問に思うかもしれません。
ウサギの血液型研究は古くから行われている
ウサギの血液型研究は少なくとも1920年代から続いており、その後H1・H2をはじめ多くの抗原が研究されてきました。1942年の研究でもH1〜H5などの抗原が紹介されています。
1958年には日本でもA、(B)、C、D、E、F、H、Iなどの抗血清を用いた分類研究が行われました。
研究上の分類がそのまま臨床で使われているわけではない
重要なのはここです。
1958年の日本の研究でも、調べた血液型分類だけでは、どの組み合わせで凝集が起こるかを予測する基準にはできなかったと報告されています。
そして2024年の研究でも、現在のウサギには広く臨床認識されている血液型がないとされています。
つまり、
赤血球抗原について研究されていることと、
輸血前に使える標準的な臨床血液型が確立していること
は別なのです。
今後さらに研究が進む可能性はある
2024年の研究では、異なる品種や地域集団では赤血球抗原や自然抗体の頻度が異なる可能性も指摘されており、さらに研究が必要とされています。
今後研究が進めば、現在より詳しくウサギの血液型と輸血適合性が分かる可能性があります。
うさぎの血液型についてよくある疑問

うさぎにもA型やB型はある?
人間と同じABO式のA型・B型として考えるのは適切ではありません。
昔のウサギ研究でAやBという記号が使われることはありますが、人間のABO式とは別のものです。
自分のうさぎの血液型を調べられる?
現時点では、犬や猫のように広く臨床利用されているウサギの血液型分類はありません。
そのため、一般の飼い主が通常の健康診断で「○型」と調べるものではありません。
血液型によって性格は変わる?
うさぎの血液型と性格を結びつける確立した科学的根拠はありません。
血液型で性格を判断するのではなく、その子の日々の行動を観察しましょう。
血液型が分からなくても輸血できる?
必要な血液を確保でき、獣医師が適切と判断すれば輸血が行われることがあります。
血液型ではなく、必要に応じてクロスマッチなどで血液の適合性を評価します。
犬や猫の血液をうさぎへ輸血できる?
通常の第一選択として考えるものではありません。
2024年の試験管内研究では、ウサギと犬・猫の血液をクロスマッチしたところ溶血は確認されなかった一方、程度の異なる凝集が起きました。研究者はウサギが犬や猫の赤血球に対する自然抗体を持つ可能性を示しています。
他種の血液を使う異種輸血については、緊急時の選択肢として研究されていますが、安全性や臨床効果についてさらに研究が必要な領域です。飼い主が「犬や猫の血なら代用できる」と判断するものではありません。
うさぎにも血液型がある?【まとめ】

うさぎにも、赤血球抗原や血液型因子に関する研究は存在します。
歴史的には、
H1
H2
H1H2
O
という分類や、H3・H4・H5を含む複数の抗原が研究されてきました。
一方で、現在の獣医療では、犬や猫のように広く臨床認識されたウサギの標準的な血液型はありません。
そのため、
「うちのうさぎはA型?B型?」
と人間と同じように分類することはできません。
また、血液型と性格を結びつける科学的根拠も確認されていません。
輸血が必要になった場合は、血液型を事前に知っているかどうかだけではなく、ドナー血との適合性やうさぎ自身の状態を確認しながら獣医師が判断します。
2024年の研究では初回輸血歴のない11羽のウサギ同士で高いクロスマッチ適合性が示されましたが、対象数や品種が限られています。さらに2026年の臨床報告では、輸血による改善が確認された一方、呼吸困難や循環過負荷などの有害反応も報告されています。
「研究上の血液型」と「現在の動物病院で行われる輸血医療」は別に考える。
これを押さえておくと、うさぎの血液型に関する情報を見たときにも混乱しにくくなります。