
ハムスターが膿を出しているのを見つけると、驚いて不安になる飼い主さんも多いでしょう。
膿は細菌感染や怪我が原因で起こることが多く、放置すると命に関わる病気に発展することもあります。
この記事では膿の正体や原因だけでなく、部位ごとの症状や治療の流れを解説します。
愛ハムを守るための早期発見と対策に役立ててください。
ハムスターの膿とはどんなもの?

さて本題に入る前にそもそも膿とはどんなものでしょうか。
膿とは簡単にいうと白血球という免疫細胞の死骸です。
まず傷口などから体内に細菌やウイルスが入って炎症が起こると白血球の仲間であるマクロファージや好中球、リンパ球といった免疫細胞たちがその細菌の元へ向かいます。
細菌の元へついた免疫細胞たちはその細菌を食べたり、倒したり、情報を伝えたりと各々の仕事をし始めます。
今回その中でも注目して欲しいのは食作用という細菌を食べる能力がある好中球とマクロファージです。
細菌やウイルスを食べた白血球はやがて仕事を終えて細菌などと共に死んでしまいます。
その死んだ白血球の死骸と細菌やウイルスが増えて溶かされた体の組織が混ざり、体内に残ったものを膿。
その現象のことを化膿と言います。
そして余談なのですが実は風邪をひいたときなどによく出てくる痰。
あれは白血球と炎症した部分の組織が混ざり合ってできているものなので膿と同じものなのです。
ハムスターが膿を出す原因って?

ハムスターが膿を出す原因は冒頭で書いてあるとおり、外傷などからバイ菌が入ることで膿が出来ます。
なので「ハムスター同士の喧嘩や口の中の怪我」、「ゲージを登っていたときに誤って落ちてできた傷」、「ゲージの中が不衛生」など理由は様々です。
膿が出来たところは腫れていたり、赤くなっていたり、ジュクジュクしていたりハムスターによっては痒かったり痛かったりするようです。
なので手足に膿が出来て痒かったり痛かったりする場合、歩き方が少しぎこちなかったり歩きたがらないという症状もみられます。
また怪我をしていなくてもゲージの中が汚くて不衛生だと細菌に感染して膿ができてしまうことがあります。
しかしこれらのことの逆をすれば膿について対策することが出来ます。
つまり「ハムスター同士を離して飼う」、「ゲージを登らないようにする」、「ゲージの中を清潔にしていつも綺麗にする」ということです。
膿が出る部位ごとの特徴と注意点

頬袋に膿が溜まる場合
ハムスターは食べ物を頬袋に詰めて持ち運ぶ習性があります。
ところが硬い餌や尖ったものを詰め込むと、袋の内側を傷つけて細菌感染を起こし、膿が溜まることがあります。
頬袋に膿ができると、顔の片側だけが腫れたり、よだれが出たり、口をあまり動かさなくなることがあります。
食欲不振や体重減少にもつながるため、早急に動物病院で洗浄や抗生物質の処方を受ける必要があります。
歯や口内に膿ができる場合
歯が伸びすぎたり、固いものをかじって歯肉を傷つけたりすると、口内に膿ができることがあります。
この場合は口臭が強くなったり、口を痛そうにして食べなくなるのが特徴です。
放置すると歯周病や顎の骨の炎症に進行することもあるため、異変を感じたら必ず診察を受けましょう。
皮膚や体表に膿が出る場合
もっとも多いのが体の表面にできる膿です。
喧嘩や転落での外傷、または不衛生な床材によって皮膚から感染し、皮下に膿が溜まることがあります。

腫れたり赤くなった部分を掻いたり舐めたりしている場合は要注意です。
体表の膿は自然に破れて膿が出てくることもありますが、そのままでは再感染や膿瘍の悪化につながるため、獣医師の処置が不可欠です。
耳から膿が出る場合
ハムスターの耳から膿が出ている場合は、中耳炎や外耳炎など耳の感染症が考えられます。
耳の中で炎症が起きると膿がたまり、耳だれのように外へ出てくることがあります。
症状としては、耳を頻繁にかく、頭を傾けて歩く、耳の周囲が赤く腫れるなどが見られます。
放置すると平衡感覚に影響してまっすぐ歩けなくなることもあるため、早期の治療が必要です。
目に膿が出る場合
目の周りや瞼から膿のような分泌物が出る場合は、結膜炎や角膜炎など目の病気が疑われます。
原因は埃や床材の刺激、喧嘩による外傷、あるいは細菌感染です。
膿が出ると目が開きにくくなり、涙や目やにが増えることがあります。
特に片目だけが腫れて膿が出ている場合は外傷性の可能性が高く、両目に出る場合は感染症の恐れがあります。
こちらも自己判断せずに、抗菌点眼薬や抗生物質の処方を受ける必要があります。

ハムスターの膿の処置方法
ハムスターの膿の取り方

膿がたまると「自宅で押し出せばいいのでは?」と思う飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、ハムスターの膿を自分で絞り出すのは非常に危険です。
皮膚が薄くデリケートなため、無理に潰すと傷口が広がったり、内部にさらに細菌が入り込んで症状が悪化してしまいます。
また、膿の袋(膿瘍)の中にはしっかり膜があるため、中途半端に膿を出しても再び溜まってしまうケースが多いのです。
実際の「膿の取り方」は、動物病院で獣医師が無麻酔または局所麻酔で切開し、洗浄・排膿を行い、必要に応じて抗生物質を処方して治療していきます。
頬袋や口内に膿が溜まっている場合も同様で、素人が処置することは不可能です。
つまり、飼い主にできる正しい「膿の取り方」とは、自分で処置せずに病院へ連れて行くことです。
早期に受診すれば治療も軽度で済む可能性が高いため、膿や腫れを見つけたらすぐに獣医師に相談しましょう。
膿は放置や自然治癒で治るのか?

ハムスターの膿は、基本的に放置して自然に治ることはほとんどありません。
確かに小さな傷ならば自然にかさぶたができて治っていくこともありますが、膿がたまる状態はすでに細菌が増えている証拠です。
免疫力で抑え込めなければ、膿が広がり炎症が悪化してしまいます。
また、一度膿が出て「治ったように見える」場合でも、内部に細菌が残っていればすぐに再発します。
頬袋や口内に膿ができた場合は特に自然治癒が期待できず、放置すれば食欲不振や衰弱につながります。
つまり「膿は自然に治るかも」と自己判断するのは危険です。
飼い主ができる治療法はないの?

ハムスターが膿を出すようになったら病院へ行きましょう。
ハムスターは傷の治りが早い生き物ですが、皮膚に余裕があり治っても傷口から入った細菌が残りやすくそこに膿が溜まることがあります。
そのまま放置をして体内に細菌を残し続けていると皮下膿瘍や細菌性皮膚炎、肝不全、腎不全、下痢など更に様々な病気になる原因となってしまいます。
なので膿を見つけたら「大丈夫だろう」と自己判断で放置せずになるべく早く動物病院へ行って抗生物質をもらい治してあげましょう。
ハムスターの子宮蓄膿症とは?

ハムスターの膿といえば外傷や皮膚から出てくるものをイメージしがちですが、実はメス特有の病気として「子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)」もあります。
これは子宮の中に膿がたまってしまう病気で、見た目の傷や外から分かる膿とは異なります。
症状としては、お腹がふくらんで見える、陰部から膿や血の混じった分泌物が出ている、食欲が落ちて元気がなくなる、といった変化が見られることがあります。
外傷性の膿とは違い、体の中で膿がたまっていくため、飼い主が気づきにくいのが特徴です。
放置すると命に関わる危険な病気であり、治療には動物病院での抗生物質の投与や、場合によっては手術が必要になるケースもあります。
外傷とは区別して考え、少しでも異変を感じたらすぐに受診することが大切です。
ハムスターが膿を出してる原因と対策【まとめ】
ハムスターの膿は小さな異変からでも進行しやすく、自己判断で放置すると危険です。
頬袋や口内、皮膚など出る部位によって症状が異なるため、日頃から食欲や動き、腫れの有無を観察しましょう。
異常を見つけたらすぐに動物病院へ。
この記事をきっかけに日常の健康チェックを習慣化し、他の記事も参考にしながら大切な命を守ってください。