
ベタが水槽の前で一生懸命に見せる「餌くれダンス」。
可愛らしい姿に思わず餌をあげたくなりますが、実はそのまま与えるとベタの健康を損ねる危険があります。
本記事では、餌くれダンスの正しい理解と、適切な餌の与え方を解説します。
ベタの餌くれダンスとは?その意味と理由を解説

ベタを飼っているとよく目にするのが「餌くれダンス」と呼ばれる行動です。
飼い主が水槽に近づいたとき、水槽の前でベタが激しく泳ぎ回り、まるで餌をねだっているように見える姿を指します。
ネオンテトラなどの小型カラシンでは目立たないためあまり言われませんが、グッピーやベタのように人慣れしやすい魚ではよく見られる行動です。
特にベタの場合は、興奮するとフレアリング(ひれを大きく広げて見せる行動)を伴うこともあり、美しい姿を楽しめる瞬間でもあります。
そのため飼い主から見ると「なついている」と感じやすいのですが、実際の意味は少し異なります。
餌くれダンスは愛情表現ではなく、「人の姿=餌がもらえる」と学習した結果の行動です。
食欲と記憶が結びつき、期待から興奮して泳ぎ回る姿が、まるでダンスのように見えるのです。

ベタが餌くれダンスをしていたら餌をあげてもいい?

せっかく餌くれダンスを一生懸命やっているのだから、当然餌をあげたいと思うのが人情です。
実際、食欲があるからこそ餌くれダンスをするわけで、その個体がおなかをすかせているのも事実です。
だったらたくさん食べさせようと思ってしまいますが、ちょっとストップしましょう。
結論からいうと、餌くれダンスをしているからといって餌をあげていいわけではありません。
たとえショーベタのような改良品種であっても、魚は限りなく野生動物に近い生き物です。
自然環境で生きている魚は、いつでもおいしい餌にありつけるわけではありません。
どこから狙っているかわからない外敵の目をかいくぐり、偶然見つけた餌を確実に食べなければ生きていけない、過酷な暮らしをしています。
このため、見つけた餌に敏感に反応できるよう、常に空腹状態を感じるような仕組みになっているのです。
このため、飼育環境では満腹なのに餌を食べたがる、といった行動につながります。
この状態で餌を与えると、口には含むもののかみ砕いて吐き出し、水を汚してしまいます。
また、この状態になるまで餌を与えてしまうと肥満になってしまい、内臓が圧迫されて健康を害してしまいます。
ベタの餌くれダンスで起こりやすいトラブル

ベタの餌くれダンスは可愛らしい反面、飼い主がつい甘やかしてしまうことでトラブルを招きやすい行動でもあります。
ここでは、餌を与えすぎた場合に実際に起こりやすい問題を詳しく解説します。
水質の悪化につながる
餌を与えすぎると、食べ残しや吐き出した餌が水中に残り、分解されてアンモニアや亜硝酸が増えます。
これらは魚にとって有害であり、水槽のバクテリアの処理能力を超えると一気に水質が悪化します。
透明だった水が白く濁る、嫌な臭いが出るなどの症状が現れるのは、この悪循環が始まったサインです。
肥満や内臓疾患のリスク
人間と同じように、ベタも肥満になると健康に深刻な影響が出ます。
脂肪が内臓を圧迫し、消化不良や浮袋のトラブルにつながるケースもあります。
特にお腹が常に膨れている状態は危険信号であり、放置すると寿命を大きく縮めてしまいます。
飼い主との関係性の誤解
餌くれダンスに応じて毎回餌を与えてしまうと、ベタは「人が来る=必ず餌がもらえる」と強く学習してしまいます。
その結果、餌をあげられないときにストレスを感じたり、逆に暴れるような行動を取ることもあります。
適切なタイミングで与えることが、ベタにとっても健全な習慣づけになります。

ベタの適切な餌の量は?

この話をしていてよく聞かれるのが、「ちょうどいいベタの餌の量は?」という質問です。
これはとても難しい質問で、ベタの大きさや環境によって変わってきてしまいます。

ある程度の目安はありますが、けっきょくは飼い主が自分で判断するしかありません。
そこで、私がいつも自分で新しい個体を飼うときにやっている方法をお伝えします。
なお、この方法は成魚サイズのベタに有効な方法です。
最初は数日間絶食させる
まずは、数日間絶食させます。
耳かき1杯程度の餌を与える
その後、耳かきいっぱい程度のごく少量の餌を与えます。
当然、健康な個体なら完食しますが、完食したら次に同じ量を与えます。
餌に反応しなくなるまで繰り返す
これを繰り返し、餌に反応しなくなるくらいまで続けます。
つまり、満腹になる量を調べるわけです。
満腹量の7~8割を目安にする
どれくらいの餌を与えると満腹になるのかわかったら、次回からは一日おきに7~8割くらいの量を与えるようにします。
少なく感じるかもしれませんし、実際にこのやり方で餌をやると目が合うたびに餌くれダンスをされます。
が、先に述べた通り、本来は魚は常に空腹でいるものです。
いつでもちょっとお腹をすかせているくらいがちょうどいいと考えましょう。
ベタの餌くダンス【まとめ】
ベタの餌くれダンスは愛らしいものですが、与えすぎは水質悪化や肥満の原因となります。
常に「少なめ」を意識して健康管理をすることが長生きの秘訣です。